「ムーニー、第十問は気に入ったかい」玄関ホールに出たとき、シリウスが聞いた。
「ばっちりさ」ルーピンがきびきびと答えた。「狼おおかみ人にん間げんを見分ける五つの兆ちょう候こうを挙あげよ。いい問題だ」
「全部の兆候を挙げられたと思うか」ジェームズが心配そうな声を出してみせた。
「そう思うよ」太陽の降ふり注ぐ校庭に出ようと正面扉の前に集まってきた生徒の群れに加わりながら、ルーピンがまじめに答えた。「一、狼人間は僕の椅子に座っている。二、狼人間は僕の服を着ている。三、狼人間の名はリーマス・ルーピン」
笑わなかったのはワームテールだけだった。「僕の答えは、口元の形、瞳孔どうこう、ふさふさの尻尾しっぽ」ワームテールが心配そうに言った。「でも、そのほかは考えつかなかった――」
「ワームテール、おまえ、ばかじゃないか」ジェームズが焦じれったそうに言った。「一ヵ月に一度は狼人間に出会ってるじゃないか――」
「小さい声で頼むよ」ルーピンが哀願あいがんした。
ハリーは心配になってまた振り返った。スネイプは試験問題用紙に没頭ぼっとうしたまま、まだ近くにいた――しかし、これはスネイプの記憶きおくだ。いったん校庭に出て、スネイプが別な方向に歩き出せば、ハリーはもうジェームズを追うことができないのは明らかだ。しかし、ジェームズと三人の友達が湖に向かって芝生しばふを闊歩かっぽし出すと――ああよかった――スネイプがついて来る。まだ試験問題を熟じゅく読どくしていて、どうやらどこに行くというはっきりした考えもないらしい。スネイプより少し前を歩くことで、ハリーはなんとかジェームズたちを観察かんさつし続けることができた。
「まあ、僕はあんな試験、楽らく勝しょうだと思ったね」シリウスの声が聞こえた。「少なくとも僕は、『オー・優ゆう』が取れなきゃおかしい」
「僕もさ」そう言うと、ジェームズはポケットに手を突っ込み、バタバタもがく金色こんじきのスニッチを取り出した。
「どこで手に入れた」
「ちょいと失敬しっけいしたのさ」ジェームズが事もなげに言った。
ジェームズはスニッチをもてあそびはじめた。三十センチほど逃がしてはパッと捕つかまえる。すばらしい反はん射しゃ神しん経けいだ。ワームテールが感服かんぷくし切ったように眺ながめていた。