ハリーは振り返ってシリウスの視線しせんを追った。
スネイプが立ち上がり、カバンにふくろう試験用紙をしまっていた。スネイプが灌木かんぼくの陰かげを出て、芝生しばふを歩きはじめたとき、シリウスとジェームズが立ち上がった。
ルーピンとワームテールは座ったままだった。ルーピンは本を見つめたままだったが、目が動いていなかったし、微かすかに眉根まゆねに皺しわを寄せていた。ワームテールはわくわくした表情を浮かべ、シリウスとジェームズからスネイプへと視線を移していた。
「スニベルス、元気か」ジェームズが大声で言った。
スネイプはまるで攻撃こうげきされるのを予測よそくしていたかのように、素早すばやく反応はんのうした。カバンを捨すて、ローブに手を突っ込み、杖つえを半分ほど振り上げた。そのときジェームズが叫さけんだ。
「エクスペリアームス 武器よ去れ」
スネイプの杖が、三、四メートル宙を飛び、トンと小さな音を立てて背後の芝生に落ちた。シリウスが吼ほえるような笑い声を上げた。
「インペディメンタ 妨害ぼうがいせよ」シリウスがスネイプに杖を向けて唱となえた。スネイプは落ちた杖に飛びつく途と中ちゅうで、撥はね飛ばされた。
周り中の生徒が振り向いて見た。何人かは立ち上がってそろそろと近づいてきた。心配そうな顔をしている者もあれば、おもしろがっている者もいた。
スネイプは荒い息をしながら地面に横たわっていた。ジェームズとシリウスが杖を上げてスネイプに近づいてきた。途中でジェームズは、水辺みずべにいる女の子たちを、肩越しにちらりと振り返った。ワームテールもいまや立ち上がり、よく見ようとルーピンの周りをじわじわ回り込み、意い地じ汚きたない顔で眺ながめていた。
「試験はどうだった スニベリー」ジェームズが聞いた。
「僕が見ていたら、こいつ、鼻を羊よう皮ひ紙しにくっつけてたぜ」シリウスが意地悪く言った。「大きな油あぶら染じみだらけの答とう案あんじゃ、先生方は一語も読めないだろうな」
見物人の何人かが笑った。スネイプは明らかに嫌われ者だ。ワームテールが甲高かんだかい冷ひやかし笑いをした。スネイプは起き上がろうとしたが、呪のろいがまだ効きいている。見えない縄なわで縛しばられているかのように、スネイプはもがいた。