「さっきチョウを見たわ」ハーマイオニーはためらいがちに言った。「あの人もとっても惨みじめな顔だった……あなたたち、また喧嘩けんかしたの」
「えっ――あ、うん、したよ」ハリーはありがたくその口こう実じつに乗った。
「何が原因」
「あの裏切うらぎり者の友達のこと、マリエッタさ」ハリーが言った。
「うん、そりゃ、無理もないぜ」ロンは学習予定表を下に置き、怒ったように言った。
「あの子のせいで……」
ロンがマリエッタ・エッジコムのことで延々えんえんと毒づきはじめたのは、ハリーには好こう都つ合ごうだった。ただ、ロンが息をつく合間あいまに、怒ったような顔をして頷うなずいたり、「うん」とか「そのとおりだ」とか相槌あいづちを打てばよかったからだ。頭の中では、ますます惨みじめな気持になりながら、「憂うれいの篩ふるい」で見たことを反芻はんすうしていた。
ハリーは、その記憶きおくが、自分を内側から蝕むしばんでいくような気がした。両親がすばらしい人だったと信じて疑わなかったからこそ、スネイプが父親の性格についてどんなに悪口を言おうと、苦もなく嘘うそだと言い切ることができた。ハグリッドもシリウスも、父親がどんなにすばらしい人だったかと、ハリーに言ったではないかああ、そうさ。でも、見ろよ、シリウス自身がどんな人間だったか。ハリーの頭の中で、しつこい声が言った……同じワルだったじゃないか そうだ、マクゴナガル先生が、父さんとシリウスには手を焼かされたと言っていたのを、一度盗み聞きしたことがある。しかし、先生は、二人が双子ふたごのウィーズリーの先せん輩ぱい格かくだという言い方をした。フレッドやジョージが、おもしろ半分に誰かを逆さかさ吊づりにすることなど、ハリーには考えられなかった……心から嫌っているやつでなければ……たとえばマルフォイとか、そうされて当然のやつでなければ……。
ハリーはなんとかして、スネイプがジェームズの手で苦しめられるのが当然だという理屈りくつをつけようとした。しかし、リリーが「彼があなたに何をしたと言うの」と言ったではないか。それに対してジェームズは、「むしろ、こいつが存在するって事実そのものがね。わかるかな……」と答えた。そもそもジェームズは、シリウスが退屈たいくつだと言ったからという単たん純じゅんな理由で、あんなことを始めたのではなかったか ルーピンがグリモールド・プレイスで言ったことをハリーは思い出した。ダンブルドアが、ルーピンを監かん督とく生せいにしたのは、ルーピンならジェームズとシリウスをなんとか抑おさえられると期待したからだと……しかし、「憂いの篩」では、ルーピンは座ったまま、成なり行ゆきを見守っていただけだ……。
ハリーは、リリーが割って入ったことを何度も思い出していた。母さんはきちんとした人だった。しかし、リリーがジェームズを怒ど鳴なりつけたときの表情を思い出すと、他の何よりも心が掻かき乱された。リリーははっきりとジェームズを嫌っていた。どうして結局結婚することになったのか、ハリーはとにかく理解できなかった。一、二度、ハリーはジェームズが無理やり結婚に持ち込んだのではないかとさえ思った……。
ほぼ五年間、父親を想おもう気持が、ハリーにとっては慰なぐさめと励はげましの源みなもとになっていた。誰かにジェームズに似ていると言われるたびに、ハリーは内心ないしん、誇ほこりに輝かがやいた。ところがいまは……父親を想おもうと寒々と惨みじめな気持になった。
哈利想努力找出一些理由,好证明斯内普活该在詹姆手里受那些罪,但是莉莉问过:“他怎么惹着你了?”而詹姆回答:“其实主要是因为他的存在,要是你理解我的意思——”詹姆不是仅仅为了小天狼星说自己觉得很无聊就挑起了事端吗?哈利记得卢平以前在格里莫广场说过,邓布利多让他当级长,是希望他能约束一下詹姆和小天狼星——但是在冥想盆里,他却坐在那里,任由这件事发生——
哈利一直提醒自己,莉莉干预了这件事,他的妈妈很正直。但是,他记得莉莉对詹姆大喊大叫时脸上的那种表情,这和其他的事一样让他心烦意乱;很显然,莉莉讨厌詹姆,哈利实在不明白他们后来怎么会结婚。有几次,他甚至怀疑詹姆是不是强迫她——
几乎五年了,对爸爸的思念一直是他感到安慰和鼓舞的源泉。每当有人说他很像詹姆,他心中就洋溢着自豪。可现在——现在他一想起詹姆就觉得寒心、难过。