「オッス」ハリーの耳に声が飛び込んできた。振り返ると、フレッドとジョージが来ていた。
「ジニーが、君のことで相談に来た」フレッドが、三人の前のテーブルに足を投げ出したので、魔法省の進路しんろに関する小冊子が数冊、床に滑すべり落ちた。「ジニーが言ってたけど、シリウスと話したいんだって」
「えーっ」ハーマイオニーが鋭するどい声を上げ、「魔法事故・惨さん事じ部ぶでバーンと行こう」に伸ばしかけた手が途と中ちゅうで止まった。
「うん……」ハリーは何気ない言い方をしようとした。「まあ、そうできたらと――」
「バカなこと言わないで」ハーマイオニーが背筋せすじを伸ばし、信じられないという目つきでハリーを見た。「アンブリッジが暖炉だんろを探り回ってるし、ふくろうは全部ボディチェックされてるのに」
「まあ、俺おれたちなら、それも回避かいひできると思うね」ジョージが伸びをしてニヤッと笑った。
「ちょっと騒ぎを起こせばいいのさ。さて、お気づきとは思いますがね、俺たちはこのイースター休きゅう暇か中、混こん乱らん戦せん線せんではかなりおとなしくしていたろ」
「せっかくの休暇だ。それを混乱させる意味があるか」フレッドがあとを続けた。「俺おれたちは自問じもんしたよ。そしてまったく意味はないと自答じとうしたね。それに、もちろん、みんなの学習を乱すことにもなりかねないし、そんなことは俺たちとしては絶対にしたくないからな」
フレッドはハーマイオニーに向かって、神しん妙みょうにちょっと頷うなずいてみせた。そんな思いやりに、ハーマイオニーはちょっと驚おどろいた顔をした。
「しかし、明日からは平へい常じょう営えい業ぎょうだ」フレッドはきびきびと話を続けた。「そして、せっかくちょいと騒ぎをやらかすなら、ハリーがシリウスと軽く話ができるようにやってはどうだろう」
「そうね、でもやっぱり」ハーマイオニーは、相当鈍にぶい人にとても単たん純じゅんなことを説明するような雰ふん囲い気きで言った。「騒ぎで気を逸そらすことができたとしても、ハリーはどうやってシリウスと話をするの」
「アンブリッジの部屋だ」ハリーが静かに言った。
この二週間、ハリーはずっと考えていたが、それ以外の選せん択たく肢しは思いつかなかった。見張られていないのは自分の暖炉だんろだけだと、アンブリッジ自身がハリーに言った。
「あなた――気は――確か」ハーマイオニーが声をひそめた。
ロンは茸きのこ栽培さいばい業の案内ビラを持ったまま、成なり行ゆきを用心深く眺ながめていた。
「確かだと思うけど」ハリーが肩かたをすくめた。