地ち下か牢ろう教きょう室しつに行くころには、ハリーもロンもハーマイオニーに口をきかなくなっていた。めげるどころか、ハーマイオニーは二人が黙だまっているのをいいことに、恐ろしい警告けいこくをひっきりなしに流し続けた。声をひそめて言うので、激はげしいシューッという音になり、シェーマスは自分の大おお鍋なべが漏もれているのではないかと調べて、まるまる五分をむだにした。
一方いっぽうスネイプは、ハリーが透とう明めいであるかのように振舞ふるまうことにしたらしい。もちろん、ハリーはこの戦せん術じゅつには慣れっこだった。バーノンおじさんの得意技の一つだ。結局、もっとひどい仕し打うちにならなかったのが、ハリーにはありがたかった。事実、嘲あざけりや、ねちねちと傷きずつけるような言葉に耐たえなければならなかったこれまでに比べれば、この新しいやり方はましだと思った。そして、まったく無む視しされれば、「強きょう化か薬やく」も、たやすく調ちょう合ごうできるとわかってうれしかった。授業の最後に、薬の一部をフラスコにすくい取り、コルク栓せんをして、採点さいてんしてもらうためにスネイプの机のところまで持って行った。ついに、どうにか「期待以上」の「イー」がもらえるかも知れないと思った。
提出して後ろを向いたとたん、ハリーはガチャンと何かが砕くだける音を聞いた。マルフォイが大喜びで笑い声を上げた。ハリーはくるりと振り返った。ハリーの提出した薬が粉々こなごなになって床に落ちていた。スネイプが、いい気味だという目で、ハリーを見てほくそ笑んでいた。
「おーっと」スネイプが小声で言った。「これじゃ、また零点れいてんだな、ポッター」
ハリーは怒りで言葉も出なかった。もう一度フラスコに詰つめて、是ぜが非ひでもスネイプに採点させてやろうと、ハリーは大股おおまたで自分の大鍋に戻った。ところがなんと、鍋に残った薬が消えていた。
「ごめんなさい」ハーマイオニーが両手で口を覆おおった。「本当にごめんなさい、ハリー。あなたがもう終ったと思って、きれいにしてしまったの」
ハリーは答える気にもなれなかった。終業ベルが鳴ったとき、ハリーはチラとも振り返らず地下牢教室を飛び出した。昼食の間はわざわざネビルとシェーマスの間に座り、アンブリッジの部屋を使う件けんで、ハーマイオニーがまたガミガミ言いはじめたりできないようにした。
「占うらない学がく」のクラスに着くころには、ハリーの機嫌きげんは最悪で、マクゴナガル先生との進しん路ろ指し導どうの約束をすっかり忘れていた。ロンにどうして先生の部屋に行かないのかと聞かれて、やっと思い出し、飛ぶように階段を駆かけ戻り、息せき切って到とう着ちゃくしたときは、数分遅おくれただけだった。