「さて、ポッター、いま言いましたように、ルーピン先生は、あなたがこの学科に卓越たくえつした適性てきせいを示したとお考えでした。当然、闇祓いにとっては――」
「わたくしのメモがおわかりになりませんでしたの ミネルバ」アンブリッジ先生が、咳をするのも忘れて甘ったるく言った。
「もちろん理解しました」マクゴナガル先生は、言葉がくぐもって聞こえるほどギリギリ歯を食いしばった。
「あら、それでしたら、どうしたことかしら……わたくしにはどうもわかりませんわ。どうしてまた、ミスター・ポッターにむだな望みを――」
「むだな望み」マクゴナガル先生は、頑かたくなにアンブリッジ先生のほうを見ずに、繰くり返した。「『闇の魔術に対する防衛術』のすべてのテストで、この子は高い成績を収おさめています――」
「お言葉を返すようで、大変申し訳ございませんが、ミネルバ、わたくしのメモにありますように、ハリーはわたくしのクラスでは大変ひどい成績せいせきですの――」
「もっとはっきり申し上げるべきでしたわ」マクゴナガル先生がついにアンブリッジを真正面から見た。「この子は、有能ゆうのうな教きょう師しによって行われた『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』のすべてのテストで、高い成績を収めています」
電でん球きゅうが突とつ然ぜん切れるように、アンブリッジ先生の笑みが消えた。椅子に座り直し、クリップボードの紙を一枚めくって猛もうスピードで書き出し、ギョロ目が右へ左へとゴロゴロ動いた。マクゴナガル先生は、骨ばった鼻の穴を膨ふくらませ、目をギラギラさせてハリーに向き直った。
「何か質問は ポッター」
「はい」ハリーが聞いた。「もしちゃんといもりの点が取れたら、魔法省はどんな性格・適性てきせい試験をするのですか」
「そうですね、圧力に抵抗ていこうする能力を発揮はっきするとか」マクゴナガル先生が答えた。「忍耐にんたいや献身けんしんも必要です。なぜなら、闇やみ祓ばらいの訓練は、さらに三年を要するのです。言うまでもなく、実じっ践せん的てきな防衛術の高度な技術も必要です。卒業後もさらなる勉強があるということです。ですから、その決意がなければ――」