「それに、どうせわかることですが」いまやひやりと冷たくなった声で、アンブリッジが言った。「魔法省は闇祓いを志願しがんする者の経歴けいれきを調べます。犯はん罪ざい歴れきを」
「――ホグワーツを出てから、さらに多くの試験を受ける決意がなければ、むしろ他の――」
「つまり、この子が闇祓いになる確率かくりつは、ダンブルドアがこの学校に戻もどってくる可か能のう性せいと同じということです」
「それなら、大いに可能性ありです」マクゴナガル先生が言った。
「ポッターは犯罪歴があります」アンブリッジが声を張り上げた。
「ポッターはすべての廉かどで無罪むざいになりました」マクゴナガルがもっと声を張り上げた。
アンブリッジ先生が立ち上がった。とにかく背が低く、立っても大して変わりはなかった。しかし、小うるさい、愛想あいそ笑いの物腰が消え、猛烈もうれつな怒りのせいで、だだっ広ぴろい弛たるんだ顔が妙みょうに邪悪じゃあくに見えた。
「ポッターが闇祓いになる可能性はまったくありません」
マクゴナガル先生も立ち上がった。こちらの立ち上がりぶりのほうがずっと迫はく力りょくがあった。マクゴナガル先生はアンブリッジ先生を高みから見下した。
「ポッター」マクゴナガル先生の声が凛りんと響ひびいた。「どんなことがあろうと、私わたくしはあなたが闇祓いになるよう援助えんじょします 毎まい晩ばん手てずから教えることになろうとも、あなたが必要とされる成績を絶対に取れるようにしてみせます」
「魔法大臣は絶対にポッターを採用さいようしません」アンブリッジの声は怒りで上うわずっていた。
「ポッターに準備ができるころには、新しい魔法大臣になっているかもしれません」マクゴナガル先生が叫さけんだ。
「はっはーん」アンブリッジ先生がずんぐりした指でマクゴナガルを指し、金切かなきり声ごえで言った。「ほーら ほら、ほら、ほら それがお望みなのね ミネルバ・マクゴナガル あなたはアルバス・ダンブルドアがコーネリウス・ファッジに取って代わればいいと思っている わたくしのいまの地位に就つくことを考えているんだわ。なんと、魔法大臣上じょう級きゅう次じ官かん並びに校長の地位に」
「何を戯言たわごとを」マクゴナガル先生は見事に蔑さげすんだ。「ポッター、これで進しん路ろ相そう談だんは終りです」
ハリーはカバンを肩かたに背せ負おい、敢あえてアンブリッジ先生を見ずに、急いで部屋を出た。二人の舌戦ぜっせんが、廊下ろうかを戻る間ずっと続いていた。