話し終ったあと、シリウスもルーピンも一いっ瞬しゅん黙だまっていた。それからルーピンが静かに言った。
「ハリー、そこで見たことだけで君の父さんを判断しないでほしい。まだ十五歳だったんだ――」
「僕だって十五だ」ハリーの言葉が熱くなった。
「いいか、ハリー」シリウスがなだめるように言った。「ジェームズとスネイプは、最初に目を合わせた瞬しゅん間かんからお互いに憎にくみ合っていた。そういうこともあるというのは、君にもわかるね ジェームズは、スネイプがなりたいと思っているものをすべて備そなえていた――人気者で、クィディッチがうまかった――ほとんど何でもよくできた。ところがスネイプは、闇やみの魔ま術じゅつに首までどっぷり浸つかった偏屈へんくつなやつだった。それにジェームズは――君の目にどう映うつったか別として、ハリー――どんなときも闇の魔術を憎にくんでいた」
「うん」ハリーが言った。「でも、父とうさんは、とくに理由もないのにスネイプを攻撃こうげきした。ただ単に――えーと、シリウスおじさんが『退屈たいくつだ』と言ったからなんだ」ハリーは少し申し訳なさそうな調ちょう子しで言葉を結んだ。
「自慢じまんにはならないな」シリウスが急いで言った。
ルーピンが横にいるシリウスを見ながら言った。
「いいかい、ハリー。君の父さんとシリウスは、何をやらせても学校中で一番よくできたということを、理解しておかないといけないよ。――みんなが二人は最高にかっこいいと思っていた――二人がときどき少しいい気になったとしても――」
「僕たちがときどき傲慢ごうまんでいやなガキだったとしてもと言いたいんだろう」シリウスが言った。
ルーピンがニヤッとした。
「父さんはしょっちゅう髪かみの毛をくしゃくしゃにしてた」ハリーが困惑こんわくしたように言った。
シリウスもルーピンも笑い声を上げた。
「そういう癖くせがあったのを忘れていたよ」シリウスが懐なつかしそうに言った。
「ジェームズはスニッチをもてあそんでいたのか」ルーピンが興きょう味み深げに聞いた。
「うん」シリウスとルーピンが顔を見合わせ、思い出に耽ふけるようににっこりと笑うのを、理解しがたい思いで見つめながら、ハリーが答えた。「それで……僕、父さんがちょっとバカをやっていると思った」
「ああ、当然あいつはちょっとバカをやったさ」シリウスが威勢いせいよく言った。「わたしたちはみんなバカだった まあ――ムーニーはそれほどじゃなかったな」シリウスがルーピンを見ながら言いすぎを訂正ていせいした。