しかしルーピンは首を振った。「私が一度でも、スネイプにかまうのはよせって言ったか 私に、君たちのやり方はよくないと忠ちゅう告こくする勇気があったか」
「まあ、いわば」シリウスが言った。「君は、ときどき僕たちのやっていることを恥はずかしいと思わせてくれた……それが大事だった……」
「それに」ここに来てしまった以上、気になっていることは全部言ってしまおうと、ハリーは食い下がった。「父さんは、湖のそばにいた女の子たちに自分のほうを見てほしいみたいに、しょっちゅうちらちら見ていた」
「ああ、まあ、リリーがそばにいると、ジェームズはいつもバカをやったな」シリウスが肩をすくめた。「リリーのそばに行くと、ジェームズはどうしても見せびらかさずにはいられなかった」
「母さんはどうして父さんと結婚けっこんしたの」ハリーは情けなさそうに言った。「父さんのことを大嫌いだったくせに」
「いいや、それは違う」シリウスが言った。
「七年生のときにジェームズとデートしはじめたよ」ルーピンが言った。
「ジェームズの高慢こうまんちきが少し治なおってからだ」シリウスが言った。
「そして、おもしろ半分に呪のろいをかけたりしなくなってからだよ」ルーピンが言った。
「スネイプにも」ハリーが聞いた。
「そりゃあ」ルーピンが考えながら言った。「スネイプは特別だった。つまり、スネイプは隙すきあらばジェームズに呪いをかけようとしたんだ。ジェームズだって、おとなしくやられっぱなしというわけにはいかないだろう」
「でも、母さんはそれでよかったの」
「正直言って、リリーはそのことはあまり知らなかった」シリウスが言った。「そりゃあ、ジェームズがデートにスネイプを連れて行って、リリーの目の前で呪いをかけたりはしないだろう」
まだ納得なっとくできないような顔のハリーに向かって、シリウスは顔をしかめた。
「いいか」シリウスが言った。「君の父さんは、わたしの無む二にの親友だったし、いいやつだった。十五歳のときには、たいていみんなバカをやるものだ。ジェームズはそこを抜け出した」
「うん、わかったよ」ハリーが気が重そうに言った。「ただ、僕、スネイプをかわいそうに思うなんて、考えてもみなかったから」
「そう言えば」ルーピンが微かすかに眉間みけんに皺しわを寄せた。「全部見られたと知ったときのスネイプの反応はんのうはどうだったのかね」
「もう二度と『閉へい心しん術じゅつ』を教えないって言った」ハリーが無む関かん心しんに言った。「まるでそれで僕ががっかりするとでも――」
「あいつが、なんだと」シリウスの叫さけびで、ハリーは飛び上がり、口一いっ杯ぱいに灰を吸すい込こんでしまった。
「ハリー、本当か」ルーピンがすぐさま聞いた。「あいつが君の訓練くんれんをやめたのか」
「うん」過か剰じょうと思える反応はんのうに驚おどろきながら、ハリーが言った。「だけど、問題ないよ。どうでもいいもの。僕、ちょっとほっとしてるんだ。ほんとのこと言う――」
「向こうへ行って、スネイプと話す」シリウスが力んで、本当に立ち上がろうとした。しかしルーピンが無理やりまた座らせた。