フレッドとジョージの例に触しょく発はつされ、大勢の生徒が、いまや空席になった「悪ガキ大だい将しょう」の座を目指して競きそいはじめたのだ。新しいドアを取りつけたのに、誰かがこっそりアンブリッジの部屋に「毛むくじゃら鼻ばなニフラー」を忍び込ませ、それがキラキラ光るものを探して、たちまち部屋をめちゃめちゃにしたばかりか、アンブリッジが部屋に入ってきたとき、ずんぐり指を噛かみ切って指輪ゆびわを取ろうと飛びかかった。「クソ爆弾」や「臭くさい玉たま」がしょっちゅう廊下に落とされ、いまや教室を出るときには「泡あぶく頭あたまの呪じゅ文もん」をかけるのが流行になった。誰も彼もが金きん魚ぎょ鉢ばちを逆さかさに被かぶったような奇き妙みょうな格好かっこうにはなったが、たしかにそれで新鮮しんせんな空気は確保かくほできた。
フィルチは、乗馬用の鞭むちを手に、悪ガキを捕つかまえようと血ち眼まなこで廊下のパトロールをしたが、なにしろ数が多いので、どこから手をつけてよいやらさっぱりわからなくなっていた。「尋じん問もん官かん親しん衛えい隊たい」もフィルチを助けようとしていたが、隊員に変なことが次々に起こった。スリザリンのクィディッチ・チームのワリントンは、ひどい皮ひ膚ふ病びょうらしいと医い務む室しつにやって来たが、コーンフレークをまぶしたような肌はだになっていた。パンジー・パーキンソンは鹿の角つのが生はえてきて、次の日の授業を全部休む羽は目めになった。ハーマイオニーは大喜びした。
一方いっぽう、フレッドとジョージが学校を去る前に、「ずる休みスナックボックス」をどんなにたくさん売っていたかがはっきりした。アンブリッジが教室に入ってくるだけで、生徒の中には、気絶きぜつするやら吐はくやら危険な高熱を出すやら、さもなければ鼻血をどっと出す者が続出した。怒りとイライラで金切かなきり声ごえを上げ、アンブリッジはなんとかしてわけのわからない症しょう状じょうの原因を突き止めようとしたが、生徒たちは頑かたくなに、「アンブリッジ炎えんです」と言い張った。四回続けてクラス全員を居残いのこらせたあと、どうしても謎なぞが解とけないままアンブリッジはしかたなく諦あきらめ、生徒たちが鼻血を流したり、卒倒そっとうしたり、汗をかいたり、吐いたりしながら、列を成なして教室を出て行くのを許可した。