ハリーもロンも、呪文をかけるはずのティーカップを杖つえで叩たたいていた。ハリーのカップに脚あしが四本生はえたが、短かすぎて机に届かず、空中で脚あしを虚むなしくバタバタさせていた。ロンのほうは、細い脚が四本ひょろひょろと生え、机からカップを持ち上げ切れずに二、三秒ふらふらしたかと思うと、ぐにゃりと曲がり、カップは真っ二つになった。
「レパロ」ハーマイオニーが即座そくざに唱となえ、杖つえを振ってロンのカップを直した。「それはそうでしょうけど、でも、モンタギューが永久にあのままだったらどうする」
「どうでもいいだろ」ロンがイライラと言った。カップは、また酔よっ払ぱらったように立ち上がり、膝ひざが激はげしく震ふるえていた。「グリフィンドールから減点げんてんしようなんて、モンタギューのやつが悪いんだ。そうだろ 誰かのことを心配したいなら、ハーマイオニー、僕のことを心配してよ」
「あなたのこと」ハーマイオニーは、自分のカップが、柳模様ウィローパターンのしっかりした四本の脚で、うれしそうに机の上を逃げて行くのを捕つかまえ、目の前に据すえ直なおしながら言った。「どうして私があなたのことを心配しなきゃいけないの」
「ママからの次の手紙が、ついにアンブリッジの検閲けんえつを通過して届いたら」弱々しい脚でなんとか重さを支えようとするカップに手を添そえながら、ロンが苦々にがにがしげに言った。「僕にとって問題は深刻しんこくさ。ママがまた『吼ほえメール』を送ってきても不ふ思し議ぎはないからな」
「でも――」
「見てろよ、フレッドとジョージが出て行ったのは僕のせいってことになるから」ロンが憂鬱ゆううつそうに言った。「ママは僕があの二人を止めるべきだったって言うさ。箒ほうきの端はしを捕まえるとか、ぶら下がるとか、なんとかして……そうだよ、何もかも僕のせいになるさ」
「だけど、もしほんとにおばさんがそんなことをおっしゃるなら、それは理り不ふ尽じんよ。あなたにはどうすることもできなかったもの でも、そんなことはおっしゃらないと思うわ。だって、もし本当にダイアゴン横よこ丁ちょうに二人の店があるなら、前々から計画していたに違いないもの」
「うん、でも、それも気になるんだ。どうやって店を手に入れたのかなあ」そう言いながら、ロンはカップを強く叩たたきすぎた。コップの脚がまた挫くじけ、目の前でひくひくしながら横たわった。「ちょっと胡う散さん臭くさいよな ダイアゴン横丁なんかに場所を借かりるのには、ガリオン金貨がごっそり要いるはずだ。そんなにたくさんの金貨を手にするなんて、あの二人はいったい何をやってたのか、ママは知りたがるだろうな」