「ええ、そうね。私もそれは気になっていたの」ハーマイオニーは、脚が机につかないハリーの短足カップの周りで、自分のカップにきっちり小さな円を描いてジョギングさせながら言った。「マンダンガスが、あの二人を説得せっとくして盗品を売らせていたとか、何かとんでもないことをさせたんじゃないかと考えていたの」
「マンダンガスじゃないよ」ハリーが短く言った。
「どうしてわかるの」ロンとハーマイオニーが同時に言った。
「それは――」ハリーは迷ったが、ついに告白こくはくするときが来たと思った。黙だまっているせいで、フレッドとジョージに犯罪はんざいの疑いがかかるなら、沈ちん黙もくを守る意味がない。「それは、あの二人が僕から金貨をもらったからさ。六月に、三校対たい抗こう試じ合あいの優ゆう勝しょう賞しょう金きんをあげたんだ」
ショックで沈黙が流れた。やがて、ハーマイオニーのカップがジョギングしたまま机の端から墜落ついらくし、床に当たって砕くだけた。
「まあ、ハリー、まさか」ハーマイオニーが言った。
「ああ、まさかだよ」ハリーが反はん抗こう的てきに言った。「それに、後悔こうかいもしていない。僕には金貨は必要なかったし、あの二人なら、すばらしい『悪戯いたずら専せん門もん店てん』をやっていくよ」
「だけど、それ、最高だ」ロンはわくわく顔だ。「みんな君のせいだよ、ハリー――ママは僕を責せめられない ママに教えてもいいかい」
「うん、そうしたほうがいいだろうな」ハリーはしぶしぶ言った。「とくに、二人が盗品の大おお鍋なべとか何かを受け取っていると、おばさんがそう思ってるんだったら」
ハーマイオニーはその授業の間、口をきかなかった。しかし、ハリーは、ハーマイオニーの自じ制せい心しんが破れるのは時間の問題だと、鋭するどく感じ取っていた。そして、そのとおり、休み時間に城を出て、五月の弱い陽ひ射ざしの下でぶらぶらしていると、ハーマイオニーが何か聞きたそうな目でハリーを見つめ、決心したような雰ふん囲い気きで口を開いた。
ハリーは、ハーマイオニーが何も言わないうちに遮さえぎった。
「ガミガミ言ってもどうにもならないよ。もうすんだことだ」ハリーはきっぱりと言った。「フレッドとジョージは金貨を手に入れた――どうやら、もう相当使ってしまった――それに、もう返してもらうこともできないし、そのつもりもない。だから、ハーマイオニー、言うだけむださ」
「フレッドとジョージのことなんか言うつもりじゃなかったわ」ハーマイオニーが感情を害したように言った。
ロンが嘘うそつけとばかりフンと鼻を鳴らし、ハーマイオニーはじろりとロンを睨にらんだ。
「いいえ、違います」ハーマイオニーが怒ったように言った。「実は、いつになったらスネイプのところに戻って、『閉へい心しん術じゅつ』の訓練を続けるように頼むのかって、それをハリーに聞こうと思ったのよ」