「さて、選手が飛び立ちました」リーが言った。「デイビースがたちまちクアッフルを取ります。レイブンクローのキャプテン、デイビースのクアッフルです。ジョンソンをかわしました。ベルをかわした。スピネットも……まっすぐゴールを狙ねらいます シュートします――そして――そして――」リーが大声で悪態あくたいをついた。「デイビースの得点です」
ハリーもハーマイオニーも他のグリフィンドール生と一緒に呻うめいた。予想どおり、反対側のスタンドで、スリザリンがいやらしくも歌いはじめた。
♪ウィーズリーは守れない
万に一つも守れない……
「ハリー」嗄しわがれ声がハリーの耳に入ってきた。「ハーマイオニー……」
横を見ると、ハグリッドの巨大なひげ面づらが席と席の間から突き出していた。後列の席の前を通ってそこまで来たらしい。通り道に座っていた一年生と二年生が、くちゃくちゃになってつぶれているように見えた。なぜかハグリッドは、姿を見られたくないかのように体を折り曲げていたが、それでも他の人より少なくとも一メートルは高い。
「なあ」ハグリッドが囁ささやいた。「一いっ緒しょに来てくれねえか いますぐ みんなが試合を見ているうちに」
「あ……待てないの、ハグリッド」ハリーが聞いた。「試合が終るまで」
「だめだ」ハグリッドが言った。「ハリー、いまでねえとだめだ……みんながほかに気を取られているうちに……なっ」
ハグリッドの鼻からゆっくり血が滴したたっていた。両りょう眼がんとも痣あざになっている。こんなに近くで見るのは、ハグリッドが帰ってきたとき以来だった。ひどく悲しげな顔をしている。
「いいよ」ハリーは即座そくざに答えた。「もちろん、行くよ」
ハリーとハーマイオニーは、そろそろと列を横に移動した。席を立って二人を通さなければならない生徒たちがブツブツ言った。ハグリッドが移動している列の生徒は文句を言わず、ただできるだけ身を縮ちぢめようとしていた。
“听着,”他小声说,“你们能跟我来一下吗?就现在?趁着大家都在看比赛的时候?”
“哦……不能等等吗,海格?”哈利问道,“等到比赛结束怎么样?”
“不行,”海格说,“不,哈利,必须现在……趁着大家都看着另一个方向……拜托。”
海格的鼻子正在渗出鼻血。他的两只眼睛全都青了。自从他回到学校以后,哈利还没有在这么近的距离看到过他,他看上去愁容满面的。