「さて」ハグリッドが言った。「その……なんだ……事ことは……」
ハグリッドが大きく息を吸った。
「つまり、俺は近々クビになる可能性が高い」
ハリーとハーマイオニーは顔を見合わせ、それからまたハグリッドを見た。
「だけど、これまで持ち堪こたえたじゃない――」ハーマイオニーが遠えん慮りょがちに言った。「どうしてそんなふうに思う――」
「アンブリッジが、ニフラーを部屋に入れたのは俺だと思っとる」
「そうなの」ハリーはつい聞いてしまった。
「まさか、絶対俺じゃねえ」ハグリッドが憤慨ふんがいした。「ただ、魔法生物のことになると、アンブリッジは俺と関係があると思うっちゅうわけだ。俺がここに戻ってからずっと、アンブリッジは俺を追い出す機会きかいを狙ねらっとったろうが。もちろん、俺は出て行きたくはねえ。しかし、本当は……特別な事じ情じょうがなけりゃ、そいつをこれからおまえさんたちに話すが、俺はすぐにでもここを出て行くところだ。トレローニーのときみてえに、学校のみんなの前であいつがそんなことをする前にな」
ハリーとハーマイオニーが抗議こうぎの声を上げたが、ハグリッドは巨大な片手かたてを振って押し止とどめた。
「なんも、それで何もかもおしめえだっちゅうわけじゃねえ。ここを出たら、ダンブルドアの手助けができる。騎き士し団だんの役に立つことができる。そんで、おまえさんたちにゃグラブリー‐プランクがいる――おまえさんたちは――ちゃんと試験を乗り切れる……」
ハグリッドの声が震ふるえ、かすれた。
「俺のことは心配ねえ」ハーマイオニーがハグリッドの腕をやさしく叩たたこうとすると、ハグリッドが慌あわてて言った。ベストのポケットから水みず玉たま模も様ようの巨大なハンカチを引っ張り出し、ハグリッドは目を拭ぬぐった。「ええか、どうしてもっちゅう事じ情じょうがなけりゃ、こんなこたあ、おまえさんたちに話しはしねえ。なあ、俺おれがいなくなったら……その、これだけはどうしても……誰かに言っとかねえと……なにしろ俺は――俺はおまえさんたち二人の助けが要いるんだ。それと、もしロンにその気があったら」
「僕たち、もちろん助けるよ」ハリーが即座そくざに答えた。「何をすればいいの」
ハグリッドはグスッと大きく洟はなを啜すすり、無言でハリーの肩をポンポン叩たたいた。その力で、ハリーは横っ飛びに倒れ、木にぶつかった。
「おまえさんなら、うんと言ってくれると思っとったわい」ハグリッドがハンカチで口を覆おおいながら言った。「そんでも、俺は……決っして……忘れねえぞ。……そんじゃ……さあ……ここを通ってもうちっと先だ……ほい、気をつけろ、毒イラクサだ……」