それからまた十五分、三人は黙だまって歩いた。あとどのくらい行くのかと、ハリーが口を開きかけたとき、ハグリッドが右手を伸ばして止まれと合図した。
「ゆーっくりだ」ハグリッドが声を低くした。「ええか、そーっとだぞ……」
三人は忍び足で進んだ。ハリーが目にしたのは、ハグリッドの背丈せたけとほとんど同じ高さの、大きくて滑なめらかな土塁どるいだった。何かとてつもなく大きな動物の寝座ねぐらに違いないと思うと、ハリーの胃袋が恐きょう怖ふで揺ゆれた。その周囲はぐるりと一帯いったいに木が根こそぎ引き抜かれ、土塁は剥むき出しの地面に立ち、その周りに垣根かきねかバリケードのように木の幹みきや太い枝が積んである。ハリー、ハーマイオニー、ハグリッドの三人はいま、その垣根の外にいた。
「眠っちょる」ハグリッドがヒソヒソ声で言った。
たしかに、遠くのほうから、巨大な一対いっついの肺が動いているような規則きそく正しいゴロゴロという音が聞こえてきた。ハリーが横目でハーマイオニーを見ると、わずかに口を開け、恐怖の表情で土塁を見つめている。
「ハグリッド」生き物の寝息ねいきに消され、やっと聞き取れるような声で、ハーマイオニーが囁ささやいた。「誰なの」
ハリーは変な質問だと思った……ハリーは「何なの」と聞くつもりだった。
「ハグリッド、話が違うわ――」いつのまにかハーマイオニーが手にした杖つえが震ふるえていた。「誰も来たがらなかったって言ったじゃない」
ハリーはハーマイオニーからハグリッドに目を移した。はっと気がついた。もう一度土塁を見たハリーは、恐怖で小さく息を呑のんだ。
ハリー、ハーマイオニー、ハグリッドの三人が楽々その上に立てるほどの巨大な土塁は、ゴロゴロという深い寝息に合わせて、ゆっくりと上下していた。土塁なんかじゃない。間違いなく背中の曲線だ。しかも――。
「その、なんだ――いや――来たかったわけじゃねえんだ」ハグリッドの声は必死だった。
「だけんど、連れてこなきゃなんねえかった。ハーマイオニー、俺はどうしても」
「でも、どうして」ハーマイオニーは泣き出しそうな声だった。「どうしてなの――いったい――ああ、ハグリッド」
「俺おれにはわかっていた。こいつを連れて戻って」ハグリッドの声も泣きそうだった。「そんで――そんで少し礼れい儀ぎ作さ法ほうを教えたら――外に連れ出して、こいつは無害だってみんなに見せてやれるって」
「無害」ハーマイオニーが金切かなきり声ごえを上げた。目の前の巨大な生き物が、眠りながら大きく唸うなって身動きし、ハグリッドがめちゃめちゃに両手を振ふって「静かに」の合図をした。
“得慢一些,”他小声说,“还要非常安静,现在……”
“嗯—— 不—— 他不想来,”海格绝望地说,“但是我必须把他带来,赫敏,我必须这么做!”