ハグリッドは向きを変えた。マゴリアンのところにまっすぐ取って返したいという様子が剥むき出しだった。
「あいつがこの森にいるかぎり、おまえたちは忍耐しろ 森はおまえたちのものでもあるし、あいつのものでもあるんだ」ハグリッドが叫さけんだ。ハリーとハーマイオニーは、ハグリッドをそのまま歩かせようと、厚手木綿モールスキンの半コートを力のかぎり押していた。しかめ面つらのまま、ハグリッドは下を見た。二人が自分を押しているのを見ると、ハグリッドの顔はちょっと驚おどろいた表情に変わった。押されているのを感じていなかったらしい。
「落ち着け、二人とも」ハグリッドは歩きはじめた。二人はハァハァ言いながら、その後ろについて行った。「しかし、いまいましい老いぼれラバだな、え」
「ハグリッド」ハーマイオニーが来る途と中ちゅうも通ってきた毒イラクサの群生ぐんせいを避よけて通りながら、声をひそめて言った。「ケンタウルスが森にヒトを入れたくないとすれば、ハリーも私も、どうにもできないんじゃないかって気が――」
「ああ、連中が言ったことを聞いたろうが」ハグリッドは相手にしなかった。「仔馬――つまり、子供は傷きずつけねえ。とにかく、あんな連中に振り回されてたまるか」
「いい線いってたけどね」ハリーががっかりしているハーマイオニーに向かって呟つぶやいた。
やっと歩道の小道に戻り、十分ほど歩くと、木立こだちが徐々じょじょにまばらになり、青空が切れ切れに見えるようになってきた。そして遠くから、はっきりした歓声かんせいと叫さけび声が聞こえてきた。
「またゴールを決めたんか」クィディッチ競技場が見えてきたとき、木々に覆おおわれた場所で立ち止まって、ハグリッドが聞いた。「それとも、試合が終ったと思うか」
「わからないわ」ハーマイオニーが惨みじめな声を出した。ハリーが見ると、森でよれよれになったハーマイオニーの姿は惨めだった。髪かみは小枝や木の葉だらけで、ローブは数ヵ所破れ、顔や腕に数え切れないほどのひっ掻かき傷きずがある。自分も同じようなものだとハリーは思った。
「どうやら終ったみてえだぞ」ハグリッドはまだ競技場のほうに目を凝こらしていた。「ほれ――もうみんな出てきた――二人とも、急げば集団に紛まぎれ込こめる。そんで、二人がいなかったことなんぞ、誰にもわかりゃせん」
「そうだね」ハリーが言った。「さあ……ハグリッド、それじゃ、またね」