「信じられない」ハグリッドに聞こえないところまで来たとたん、ハーマイオニーが動揺どうようし切った声で言った。「信じられない。ほんとに信じられない」
「落ち着けよ」ハリーが言った。
「落ち着けなんて」ハーマイオニーは興こう奮ふんしていた。「巨人よ 森に巨人なのよ それに、その巨人に私たちが英語を教えるんですって しかも、もちろん、殺気だったケンタウルスの群れに、途と中ちゅう気づかれずに森に出入りできればの話じゃない ハグリッドったら、信じられない。ほんとに信じられないわ」
「僕たち、まだ何にもしなくていいんだ」ペチャクチャしゃべりながら城へと帰るハッフルパフの流れに潜もぐり込みながら、ハリーは低い声でハーマイオニーをなだめようとした。
「追い出されなければ、ハグリッドは僕たちに何にも頼みやしない。それに、ハグリッドは追い出されないかもしれない」
「まあ、ハリー、いい加減かげんにしてよ」ハーマイオニーが憤慨ふんがいし、その場で石のように動かなくなったので、後ろを歩いていた生徒たちは、ハーマイオニーを迂回うかいして歩かなければならなかった。
「ハグリッドは必ず追い出されるわよ。それに、はっきり言って、いましがた目もく撃げきしたことから考えて、アンブリッジが追い出しても無理もないじゃない」
一いっ瞬しゅん言葉が途と切ぎれ、ハリーがハーマイオニーをじーっと睨にらんだ。ハーマイオニーの目にじんわりと涙が滲にじんでいた。
「本気で言ったんじゃないよね」ハリーが低い声で言った。
「ええ……でも……そうね……本気じゃないわ」ハーマイオニーは怒ったように目を擦こすった。
「でもどうしてハグリッドは苦労を背負しょい込こむのかしら……それに私たちにまでどうして」
「さあ――」
♪ウィーズリーは我が王者おうじゃ
ウィーズリーは我が王者
クアッフルをば止めたんだ
ウィーズリーは我が王者
「それに、あのバカな歌を歌うのをやめてほしい」ハーマイオニーは打ちひしがれたように言った。「あの連中、まだからかい足りないって言うの」
大勢の生徒が、競技場から芝生しばふをひたひたと上ってきた。
「さあ、スリザリン生と顔を合わせないうちに中に入りましょうよ」
ハーマイオニーが言った。
♪ウィーズリーは守れるぞ
万に一つも逃のがさぬぞ
だから歌うぞ、グリフィンドール
ウィーズリーは我が王者
「ハーマイオニー……」ハリーが何かに気づいたように言った。