グリフィンドールに辛からくも優ゆう勝しょう杯はいをもたらした立たて役やく者しゃのロンは、有う頂ちょう天てんで、次の日はなんにも手につかないありさまだった。試合の一部始終を話したがるばかりのロンに、ハリーとハーマイオニーは、グロウプのことを切り出すきっかけがなかなかつかめなかった。もっとも二人とも積極的に努力したわけではない。こんな残酷ざんこくなやり方でロンを現実に引き戻すのは、どちらも気が進まなかったのだ。その日も暖あたたかな晴れた日だったので、二人は湖の辺ほとりのブナの木陰こかげで勉強しようとロンを誘さそった。談だん話わ室しつよりそこのほうが盗み聞きされる危険性が少ないはずだ。ロンは、はじめあまり乗り気ではなかった――ときどき爆発ばくはつする「♪ウィーズリーは我が王者おうじゃ」の歌声はもちろんのこと、グリフィンドール生がロンの座っている椅子を通り過ぎるとき、背中を叩たたいて行くのがすっかり気に入っていたからだ。――しかし、しばらくすると、新鮮しんせんな空気を吸ったほうがいいという意見に従った。
ブナの木陰で本を広げ、それぞれに座ったが、ロンは試合最初のゴールセーブの話を、もう十数回目になるのに、またしても一部始終二人に聞かせた。
「でもさ、ほら、もうデイビースのゴールを一回許しちゃったあとだから、僕、そんなに自信はなかったんだ。だけど、どうしたのかなぁ、ブラッドリーがどこからともなく突っ込んできたとき、僕は思ったんだ――やるぞ どっちの方向に飛ぶかを決めるのはほんの一いっ瞬しゅんさ。だって、やつは右側のゴールを狙ねらっているみたいに見えたんだ――もちろん僕の右、やつの左ね――だけど、変なんだよね。僕、やつがフェイントをかましてくるような気がしたんだ。一か八か、僕は左に飛んだね――やつの右だけどね――そして――まあ――結果は観みてただろう」ロンは最後を控ひかえめに語り終え、必要もないのに髪かみを後ろに掻かき上げ、見せびらかすように風に吹かれた効果こうかを出し、近くにいた生徒たちにチラッと目をやり――ハッフルパフの三年生が塊かたまって噂うわさ話ばなしをしていた――自分の話が聞こえたかどうかチェックした。「それで、チェンバーズがそれから五分後に攻せめてきたとき―――どうしたんだ」ハリーの表情を見て、ロンは話を中断した。「何をニヤニヤしてるんだ」
「してないよ」
ハリーは慌あわててそう言うと、下を向いて「変へん身しん術じゅつ」のノートを見ながら、まじめな顔に戻そうとした。本当のことを言えば、ロンの姿がもう一人のグリフィンドールのクィディッチ選手と重なってしかたがなかったのだ。かつてこの同じ木の下に座って髪をくしゃくしゃにしていた人だ。
「ただ、僕たちが勝ったのがうれしいだけさ」