城の庭はペンキを塗ぬったばかりのように、陽ひの光に輝かがやいていた。雲ひとつない空が、キラキラ光る滑なめらかな湖に映うつる自分の姿に微笑ほほえみかけ、艶つややかな緑の芝生しばふが、やさしいそよ風に時折ときおりさざなみを立てている。もう六月だった。しかし、五年生にとっては、その意味はただ一つだった。ついにふ・く・ろ・う試験がやってきた。
先生方はもう宿題を出さず、試験にもっとも出題されそうな予想問題の練習に時間を費やした。目的に向かう熱っぽい雰ふん囲い気きが、ハリーの頭から以外のものをほとんど全部追い出していた。ただときどき、「魔ま法ほう薬やく」の授業中に、ルーピンはスネイプに「閉へい心しん術じゅつ」の特訓とっくんを続けなければならないと言ったのだろうか、と考えることがあった。もし言ったのなら、スネイプは、いまハリーを無む視ししていると同じように、ルーピンをも完全に無視していることになる。ハリーにとっては好こう都つ合ごうだった。スネイプとの追加ついかの訓練がなくともハリーは十分に忙いそがしかったし、緊きん張ちょうしていた。ハーマイオニーもこのごろは試験に気を取られるあまり、「閉心術」についてしつこく言わなくなっていたので、ハリーはほっとしていた。ハーマイオニーは長い時間独ひとりでブツブツ言っていたし、このところ何日もしもべ妖よう精せいの服を置いていない。
試験が確実に近づいてくると、おかしな行動を取るのはハーマイオニーだけではなかった。アーニー・マクミランは誰彼だれかれなく捕つかまえては勉強のことを質問するという癖くせがつき、みんなをイライラさせた。
「一日に何時間勉強してる」
ハリーとロンが「薬やく草そう学がく」の教室の外に並んでいると、マクミランがギラギラと落ち着かない目つきで質問した。
「さあ」ロンが言った。「数時間だろ」
「八時間より多いか、少ないか」
「少ないと思うけど」ロンは少し驚おどろいた顔をした。
「僕は八時間だ」アーニーが胸を反そらせた。「八時間か九時間さ。毎日朝食の前に一時間やってる。平均で八時間だ。週末に調子がいいときは十時間できるし、月曜は九時間半やった。火曜はあんまりよくなかった――七時間十五分しかやらなかった。それから水曜日は――」
この時点で、スプラウト先生がみんなを三号温室に招しょうじ入れ、アーニーは独どく演えん会かいをやめざるをえなくなったので、ハリーはとてもありがたかった。
一方いっぽう、ドラコ・マルフォイは違ったやり方で周りにパニックを引き起こしていた。