「まあ、それほど大変じゃなかったわよね」
二時間後、玄関ホールで、試験問題用紙をしっかり握にぎったまま、ハーマイオニーが不安そうに言った。
「『元気の出る呪じゅ文もん』を十分に答えたかどうか自信がないわ。時間が足りなくなっちゃって。しゃっくりを止める反対呪文を書いた 私、判断がつかなくて。書きすぎるような気がしたし――それと23番の問題は――」
「ハーマイオニー」ロンが厳きびしい声で言った。「もうこのことは了りょう解かいずみのはずだ……終った試験をいちいち復ふく習しゅうするなよ。本番だけでたくさんだ」
五年生は他の生徒たちと一いっ緒しょに昼食をとった昼食時には四つの寮りょうのテーブルがまた戻っていた。それから、ぞろぞろと大広間の脇わきにある小部屋に移動し、実技試験に呼ばれるのを待った。名めい簿ぼ順じゅんに何人かずつ名前が呼ばれ、残った生徒はブツブツ呪文を唱となえたり、杖つえの動きを練習したり、ときどき間違えて互いに背中や目を突いたりしていた。
ハーマイオニーの名前が呼ばれた。一いっ緒しょに呼ばれたアンソニー・ゴールドスタイン、グレゴリー・ゴイル、ダフネ・グリーングラスとともに、ハーマイオニーは震ふるえながら小部屋を出て行った。テストのすんだ生徒は部屋に戻らなかったので、ハリーもロンも、ハーマイオニーの試験がどうだったかわからなかった。
「大だい丈じょう夫ぶだよ。『呪文学』のテストで一度百十二点も取ったこと、憶おぼえてるか」
ロンが言った。
十分後、フリットウィック先生が呼んだ。「パーキンソン、パンジー――パチル、パドマ――パチル、パーバティ――ポッター、ハリー」
「がんばれよ」ロンが小声で声援せいえんした。ハリーは手が震えるほど固く杖を握にぎり締しめて、大広間に入った。
「トフティ教きょう授じゅのところが空あいているよ、ポッター」
扉とびらのすぐ内側に立っていたフリットウィック先生が、キーキー声で言った。先生の指差した奥の隅すみに小さいテーブルがあり、見たところ一番年老いて一番禿はげた試し験けん官かんが座っていた。少し離はなれたところにマーチバンクス教授がいて、ドラコ・マルフォイのテストを半分ほど終えたところらしい。
「ポッター、だね」
ハリーが近づくと、トフティ教授はメモを見ながら、鼻メガネ越しにハリーの様子を窺うかがった。
「有名なポッターかね」
ハリーは、マルフォイが嘲あざけるような目つきで見るのを、目の端からはっきり見た。マルフォイの浮上させていたワイングラスが、床に落ちて砕くだけた。ハリーはつい、にやりとした。トフティ教授が、励はげますようににっこり笑い返した。