「いいわ」ハーマイオニーは両手を絡からみ合わせて机の間を往いったり来きたりしながら言った。
「いいわ……それじゃ……誰か一人がアンブリッジを探して――別な方向に追い払う。部屋から遠ざけるのよ。口こう実じつは――そうね――ピーブズがいつものように、何かとんでもないことをやらかそうとしているとか……」
「僕がやる」ロンが即座そくざに答えた。「ピーブズが『変へん身しん術じゅつ』の部屋をぶち壊こわしてるとかなんとか、あいつに言うよ。アンブリッジの部屋からずーっと遠いところだし。どうせだから、途と中ちゅうでピーブズに出会ったら、ほんとにそうしろって説得せっとくできるかもしれないな」
「変へん身しん術じゅつ」の部屋をぶち壊こわすことにハーマイオニーが反対しなかったことが、事態じたいの深刻しんこくさを示していた。
「オーケー」ハーマイオニーは眉間みけんに皺しわを寄せて、往いったり来きたりし続けていた。「さて、私たちが部屋に侵しん入にゅうしている間、生徒をあの部屋から遠ざけておく必要があるわ。じゃないと、スリザリン生の誰かが、きっとアンブリッジに告げ口する」
「ルーナと私が廊下ろうかの両端に立つわ」ジニーが素早すばやく答えた。「そして、誰かが『首絞くびしめガス』をどっさり流したから、あそこに近づくなって警告けいこくするわ」
ハーマイオニーは、ジニーが手回しよくこんな嘘うそを考えついたことに驚おどろいた顔をした。ジニーは肩をすくめた。
「フレッドとジョージが、いなくなる前に、それをやろうって計画していたのよ」
「オーケー」ハーマイオニーが言った。「それじゃ、ハリー、あなたと私は『透とう明めいマント』を被かぶって、部屋に忍び込む。そしてあなたはシリウスと話ができる――」
「ハーマイオニー、シリウスはあそこにいないんだ」
「あのね、あなたは――シリウスが家にいるかどうか確かめられるっていう意味よ。その間、私が見張ってるわ。アンブリッジの部屋にあなた一人だけでいるべきじゃないと思うの。リーがニフラーを窓から送り込んで、窓が弱点だということは証しょう明めいずみなんだから」
怒ってイライラしてはいたものの、一いっ緒しょにアンブリッジの部屋に行くとハーマイオニーが申し出たのは、団結だんけつと忠ちゅう誠せいの証あかしだとハリーにはよくわかった。
「僕……オーケー、ありがとう」ハリーがボソボソ言った。
「これでよしと。さあ、こういうことを全部やっても、五分以上は無理だと思うわ」ハリーが計画を受け入れた様子なのでほっとしながら、ハーマイオニーが言った。「フィルチもいるし、『尋じん問もん官かん親しん衛えい隊たい』なんていう卑劣ひれつなのがうろうろしてるしね」
「五分で十じゅう分ぶんだよ」ハリーが言った。「さあ、行こう――」
「いまから」ハーマイオニーが度肝どぎもを抜かれた顔をした。
「もちろんいまからだ」ハリーが怒って言った。「何だと思ったんだい 夕食のあとまで待つとでも ハーマイオニー、シリウスはたったいま拷問ごうもんされてるんだぞ」
「私――ええ、いいわ」ハーマイオニーが捨すて鉢ばちに言った。「じゃ、『透明マント』を取りに行ってきて。私たちは、アンブリッジの廊下の端であなたを待ってるから。いい」