「ここは通れないわよ」ジニーがみんなに呼びかけていた。「だめ。悪いけど、回転階段を通って回り道してちょうだい。誰かがすぐそこで『首絞くびしめガス』を流したの――」
みんながブーブー言う声が聞こえてきた。誰かが不ふ機き嫌げんな声で言った。
「ガスなんて見えないぜ」
「無色だからよ」ジニーがいかにも説せっ得とく力りょくのあるイライラ声で言った。「でも、突っ切って歩きたいならどうぞ。ほかに私たちの言うことを信じないバカがいたら、あなたの死体を証しょう拠こにするから」
だんだん人がいなくなった。「首絞めガス」のニュースがどうやら広まったらしく、もう誰もこっちのほうに来なくなった。ついに周辺に誰もいなくなったとき、ハーマイオニーが小声で言った。「これぐらいでいいんじゃないかしら、ハリー――さあ、やりましょう」
二人は「マント」に隠れたまま前進した。ルーナがこっちに背中を見せて、廊下ろうかの向こう端に立っている。ジニーのそばを通るとき、ハーマイオニーが囁ささやいた。
「うまくやったわね……合図を忘れないで」
「合図って」アンブリッジの部屋のドアに近づきながら、ハリーがそっと聞いた。
「アンブリッジが来るのを見たら、『ウィーズリーは我が王者』を大声で合がっ唱しょうするの」ハーマイオニーが答えた。ハリーはシリウスのナイフの刃をドアと壁かべの隙間すきまに差し込んでいた。ドアがカチリと開き、二人は中に入った。
絵皿のけばけばしい子猫が、午後の陽ひ射ざしを浴あびてぬくぬくと日向ひなたぼっこをしていた。それ以外は、前のときと同じように、部屋は静かで人気ひとけがない。ハーマイオニーはほっとため息を漏もらした。
「二匹目のニフラーのあとで、何か安全対たい策さくが増えたかと思ってたけど」
二人は「マント」を脱ぬぎ、ハーマイオニーは急いで窓際まどぎわに行って見張りに立ち、杖つえを構かまえて校庭を見下ろした。ハリーは暖炉だんろに急行し、煙えん突とつ飛ひ行こう粉ごなの壷つぼをつかみ、火ひ格ごう子しにひと摘つまみ投げ入れた。たちまちエメラルドの炎が燃え上がった。ハリーは急いで膝ひざをつき、メラメラ踊おどる炎に頭を突っ込んで叫さけんだ。
「グリモールド・プレイス十二番地」
“什么信号?”当他们到达乌姆里奇的门前时,哈利低声问。