外が騒がしくなり、でかいスリザリン生が数人入ってきた。ロン、ジニー、ルーナをそれぞれがっちり捕まえている。そして――ハリーはうろたえた――ネビルがクラッブに首を絞しめられ、いまにも窒息ちっそくしそうな顔で入ってきたのだ。四人ともさるぐつわをかまされていた。
「全部捕とらえました」ワリントンがロンを乱暴に前に突き出した。「あいつですが」ワリントンが太い指でネビルを指した。「こいつを捕まえるのを邪魔じゃましようとしたんで」こんどはジニーを指差した。ジニーは自分を捕まえている大柄おおがらのスリザリンの女子生徒の向こう脛ずねを蹴け飛とばそうとしていた。「それで一いっ緒しょに連れてきました」
「結構けっこう、結構」ジニーが暴れるのを眺ながめながらアンブリッジが言った。「さて、まもなくホグワーツは『非ひウィーズリー地帯ちたい』になりそうだわね」
マルフォイがへつらうように大声で笑った。アンブリッジは満足げにニーッと笑い、チンツ張ばりの肘ひじ掛かけ椅い子すに腰を下ろし、花園はなぞののガマガエルよろしく、目をパチクリパチクリしながら捕虜ほりょを見上げた。
「さて、ポッター」アンブリッジが口を開いた。「おまえはわたくしの部屋の周りに見張りを立て、この道化どうけを差し向けて」アンブリッジはロンのほうを顎あごでしゃくった――マルフォイがますます大声で笑った――「ポルターガイストが『変へん身しん術じゅつ』の部屋を壊こわしまくっていると言わせたわね。わたくしはね、そいつが学校の望遠鏡のレンズにインクを塗ぬりたくるのに忙いそがしいということを百も承しょう知ちだったのよ――フィルチさんがそう教えてくれたばかりだったのでね」
「おまえが誰かと話すことが大事だったのは明白だわ。アルバス・ダンブルドアだったの それとも半人間のハグリッド ミネルバ・マクゴナガルじゃないわね。まだ弱っていて誰とも話せないと聞いてますしね」
マルフォイと尋じん問もん官かん親しん衛えい隊たいのメンバーが二、三人、それを聞いてまた笑った。ハリーは怒りと憎にくしみとで体が震ふるえるのがわかった。
「誰と話そうが関係ないだろう」ハリーが唸うなるように言った。
アンブリッジの弛たるんだ顔が引き締しまった。
「いいでしょう」例の危険極きわまりない、偽にせの甘ったるい声でアンブリッジが言った。「結構けっこうですよ、ミスター・ポッター……自発的に話すチャンスを与えたのに。おまえは断ことわった。強制するしか手はないようね。ドラコ――スネイプ先生を呼んできなさい」
マルフォイはハリーの杖つえをローブにしまい、ニヤニヤしながら部屋を出て行った。しかしハリーはそれをほとんど意識していなかった。たったいま、あることに気づいたのだ。忘れていたなんて、なんてばかだったのだろう。ハリーのシリウス救出に手を貸かせる騎き士し団だんの団員はみんないなくなってしまったと思っていた――間違いだった。不ふ死し鳥ちょうの騎士団が、まだ一人ホグワーツに残っていた――スネイプだ。