「いいでしょう」アンブリッジは杖つえを取り出した。「しかたがない……ほかに手はない……この件けんは学校の規律きりつの枠わくを超こえます……魔法省の安全の問題です……そう……そうだわ……」
アンブリッジは自分で自分を説得せっとくしているようだった。ハリーを睨にらみ、片手かたてに持った杖で、空あいているほうの手のひらをパシパシ叩たたきながら、息を荒あららげ、神しん経けい質しつに右に左に体を揺ゆらしていた。アンブリッジを見つめながら、ハリーは杖のない自分がひどく無力に感じられた。
「あなたがこうさせるんです、ポッター……やりたくはない」アンブリッジはその場で落ち着かない様子で体を揺すり続けていた。「しかし、場合によっては使用が正当化される……ほかに選択せんたくの余よ地ちがないということが、大臣にはわかるに違いない……」
マルフォイは待ち切れない表情を浮かべてアンブリッジを見つめていた。
「『磔はりつけの呪のろい』なら舌も緩ゆるむでしょう」アンブリッジが低い声で言った。
「やめて」ハーマイオニーが悲鳴ひめいを上げた。「アンブリッジ先生――それは違法いほうです」
しかし、アンブリッジはまったく意に介かいさなかった。ハリーがこれまで見たことがない、いやらしい、意い地じ汚きたない、興こう奮ふんした表情を浮かべ、アンブリッジが杖を構かまえた。
「アンブリッジ先生、大臣は先生に法律を破ってほしくないはずです」ハーマイオニーが叫さけんだ。
「知らなければ、コーネリウスは痛くも痒かゆくもないでしょう」アンブリッジが言った。いまや、少し息を弾はずませ、杖をハリーの体のあちこちに向けて、どこが一番痛むか、狙ねらいを定めているらしい。「この夏、吸魂鬼ディメンターにポッターを追えと命令したのはこのわたくしだと、コーネリウスは知らなかったわ。それでも、ポッターを退学にするきっかけができて大喜びしたことに変わりはない」
「あなたが」ハリーは絶句ぜっくした。「あなたが僕に吸魂鬼を差し向けた」
「誰かが行動を起こさなければね」アンブリッジは杖をハリーの額ひたいにぴたりと合わせながら、囁ささやくように言った。「誰も彼も、おまえを何とか黙だまらせたいと愚ぐ痴ちってばかり――おまえの信用を失墜しっついさせたいとね――ところが、実際じっさいに何か手を打ったのはわたくしだけだった……ただ、おまえはうまく逃のがれたね、え ポッター 今日はそうはいかないよ。こんどこそ」アンブリッジは息を深く吸い込んで唱となえた。「クル――」
「やめてーっ」ミリセント・ブルストロードの陰かげから、ハーマイオニーが悲痛ひつうな声で叫んだ。「やめて――ハリー――白はく状じょうしないといけないわ」
「絶対ダメだ」陰に隠れて少ししか姿の見えないハーマイオニーを見つめて、ハリーが叫んだ。
「白はく状じょうしないと、ハリー、どうせこの人はあなたから無理やり聞き出すじゃない。なんで……なんでがんばるの」
ハーマイオニーはミリセント・ブルストロードのローブの背中に顔を埋うずめてめそめそ泣き出した。ミリセントはすぐにハーマイオニーを壁かべに押しつけるのをやめ、むかむかしたようにハーマイオニーから身を引いた。
“钻心咒应该能让你开口。”乌姆里奇轻轻地说。
“不!”赫敏尖叫道,“乌姆里奇教授—— 这是违法的。” 但是乌姆里奇没听到。哈利以前从来没见过她脸上那种凶恶、急切、兴奋的表情。她扬起了魔杖。
“绝不!”哈利大声喊道,瞪着他仅能看到的赫敏那一小部分身体。“我们必须告诉她,哈利,反正她也会逼着你说出来,那有……有什么意义呢?”赫敏开始在米里森伯斯德的长袍后面软弱地哭了起来。米里森立刻不再把她顶在墙上,而且马上露出厌恶的表情避开了她。