またしても壁かべが回転し、そしてまた静かになった。ハリーは適当てきとうな扉に近づき、押した。動かなかった。
「どうしたの」ハーマイオニーが聞いた。
「これ……鍵かぎが掛かかってる……」ハリーが体ごとぶつかりながら言った。扉はびくともしない。
「それじゃ、これがそうなんじゃないか」ロンが興こう奮ふんし、ハリーと一いっ緒しょに扉を押し開けようとした。「違いないよ」
「どいて」ハーマイオニーが鋭するどくそう言うと、通常の扉の鍵の位置に杖つえを向けて唱となえた。
「アロホモーラ」
何事も起こらない。
「シリウスのナイフだ」
ハリーはローブの内側からナイフを引っ張り出し、扉と壁の間に差し込んだ。ハリーがナイフをてっぺんから一番下まで走らせ、取り出し、もう一度肩で扉にぶつかるのを、みんなが息を殺して見守った。扉は相変わらず固く閉まったままだった。その上、ハリーがナイフを見ると、刃が溶とけていた。
「いいわ。この部屋は放ほうっておきましょう」ハーマイオニーが決然けつぜんと言った。
「でも、もしここだったら」ロンが不安と望みが入り交まじった目で扉を見つめながら言った。
「そんなはずないわ。ハリーは夢で全部の扉を通り抜けられたんですもの」
ハーマイオニーはまた燃える「×」印をつけ、ハリーは役に立たなくなったシリウスのナイフの柄えをポケットに戻した。
「あの部屋に入ってたかもしれない物、なんだかわかる」壁がまた回転しはじめたとき、ルーナが熱っぽく言った。
「どうせまた、じゅげむじゅげむでしょうよ」ハーマイオニーがこっそり言った。ネビルが怖こわさを隠すように小さく笑った。
壁がスーッと止まり、ハリーはだんだん絶ぜつ望ぼう的てきになりながら、次の扉を押した。
「ここだ」