ネビルは悲鳴ひめいを上げ、両足を縮ちぢめて胸に引きつけたので、一いっ瞬しゅん、死喰い人に持ち上げられる格好かっこうになった。死喰い人が手を放はなし、床に落ちたネビルは苦痛くつうにひくひく体を引き攣つらせ、悲痛ひつうな声を上げ続けた。
「いまのはまだご愛あい嬌きょうだよ」ベラトリックスは杖を下ろし、ネビルの悲鳴がやみ、足下あしもとに倒たおれて泣きじゃくるまま放置ほうちした。そしてハリーを睨にらんだ。「さあ、ポッター、予言を渡すか、それともかわいい友が苦しんで死ぬのを見殺しにするか」
考える必要もなかった。道は一つだ。握り締しめた手の温ぬくもりで熱くなっていた予言の球を、ハリーはさし出した。マルフォイがそれを取ろうと飛び出した。
そのとき、ずっと上のほうで、また二つ、扉とびらがバタンと開き、五人の姿が駆かけ込んできた。シリウス、ルーピン、ムーディ、トンクス、キングズリーだ。
マルフォイが向きを変え、杖つえを上げたが、トンクスがもう、マルフォイめがけて「失しっ神しん呪じゅ文もん」を放はなっていた。命中したかどうかを見る間もなく、ハリーは台座だいざを飛び降おりて光線を避よけた。死し喰くい人びとたちは、出現した騎き士し団だんのメンバーのほうに完全に気を取られていた。五人は窪くぼみに向かって石段を飛び降りながら、死喰い人に呪文を雨あめ霰あられと浴あびせた。矢のように動く人影と閃光せんこうが飛び交かう中で、ハリーはネビルが這はいずって動いているのを見た。赤い閃光をもう一本かわし、ハリーは床を匍匐ほふくしてネビルのそばに行った。
「大だい丈じょう夫ぶか」ハリーが大声で聞いたとたん、二人の頭のすぐ上を、また一つ、呪文が飛び過ぎていった。
「うん」ネビルが自分で起き上がろうとした。
「それで、ロンは」
「大丈夫だどおぼうよ――ぼぐが部屋を出だどぎ、まだ脳びぞど戦っでだ」
二人の間に呪文が当たり、石の床が炸裂さくれつした。今のいままでネビルの手があったところが抉えぐれて、穴が空あいた。二人とも急いでその場を離はなれた。そのとき、太い腕がどこからともなく伸びてきて、ハリーの首根っこをつかみ、爪先つまさきが床にすれすれに着くぐらいの高さまで引っ張り上げた。
「それをこっちによこせ」ハリーの耳元で声が唸うなった。「予言をこっちに渡せ――」