「しかたがない――どうぞ」
「なーんにも ははは。言っただろう。『どうぞ』と言わなけりゃ『なーんにも』言わないって。はっはのはーだ」
ピーブズがヒューッと消える音と、フィルチが怒いかり狂くるって悪あく態たいをつく声が聞こえた。
「フィルチはこのドアに鍵かぎが掛かかってると思ってる。もうオーケーだ――ネビル、離はなしてくれよ」
ハリーがヒソヒソ声で言った。ネビルはさっきからハリーのガウンの袖そでを引ひっ張ぱっていたのだ。
「え なに」
ハリーは振り返った――そしてはっきりと見た。「なに」を。しばらくの間、ハリーは自分が悪あく夢むにうなされているに違いないと思った――あんまりだ。今日はもう、いやというほどいろいろあったのに。
そこはハリーが思っていたような部屋ではなく、廊ろう下かだった。しかも四階の『禁きんじられた廊下』だ。いまこそ、なぜ立ち入り禁きん止しなのか納なっ得とくした。
四人が真ま正しょう面めんに見たのは、怪獣かいじゅうのような犬の目だった――床から天井てんじょうまでの空間全部がその犬で埋まっている。頭が三つ。血ち走ばしった三組のギョロ目。三つの鼻がそれぞれの方向にヒクヒク、ピクピクしている。三つの口から黄色い牙きばをむき出し、その間からヌメヌメとした縄なわのように、ダラリとよだれが垂たれ下さがっていた。
“他以为这扇门是锁着的,”哈利低声说,“我想我们不会有事了—— 走开,纳威!”纳威一直在拉扯哈利长袍的袖子。“怎么啦?”
哈利一转身—— 看见了,清清楚楚地看见了。一时间,他相信自己一定是走进了一场噩梦—— 在已经发生了这么多事情之后,这简直太过分了。
他们并不是像他以为的那样在一个房间里。他们是在一条走廊里。是四楼的那条禁止入内的走廊。现在他们知道这里为什么禁止入内了。
他们正面对着一条怪物般的大狗的眼睛,这条狗大得填满了从天花板到地板的所有空间。它有三个脑袋,三双滴溜溜转动的凶恶的眼睛,三个鼻子—— 正朝他们的方向抽搐、颤抖,还有三个流着口水的嘴巴,口水像黏糊糊的绳子,从泛黄的狗牙上挂落下来。