「何かしてる――箒ほうきに呪のろいをかけてる」ハーマイオニーが言った。
「僕たち、どうすりゃいいんだ」
「私に任まかせて」
ロンが次の言葉を言う前に、ハーマイオニーの姿は消えていた。ロンは双眼鏡をハリーに向けた。箒は激はげしく震ふるえ、ハリーもこれ以上つかまっていられないようだった。観客は総そう立だちだ。恐怖きょうふで顔を引きつらせて見ている。双ふた子ごのウィーズリーがハリーに近づいていった。自分たちの箒に乗り移らせようとしたが、ダメだ。近づくたび、ハリーの箒はさらに高く飛び上がってしまう。双子はハリーの下で輪わを描かくように飛びはじめた。落ちてきたら下でキャッチするつもりらしい。マーカス・フリントはクアッフルを奪うばい、誰にも気づかれず、五回も点を入れた。
「早くしてくれ、ハーマイオニー」ロンは必ひっ死しで呟いた。
ハーマイオニーは観衆かんしゅうを掻かき分け、スネイプが立っているスタンドにたどり着き、スネイプの一つ後ろの列を疾しっ走そうしていた。途中とちゅうでクィレルとぶつかってなぎ倒し、クィレルは頭からつんのめるように前の列に落ちたが、ハーマイオニーは、立ち止まりも謝あやまりもしなかった。スネイプの背はい後ごに回ったハーマイオニーはそっとうずくまり、杖つえを取り出し、二ふた言こと三み言ことしっかり言葉を選んで呟いた。杖から明るいブルーの炎が飛び出し、スネイプのマントの裾すそに燃え移った。三十秒もすると、スネイプは自分に火がついているのに気づいた。鋭い悲ひ鳴めいがあがったので、ハーマイオニーはこれでうまくいったとわかった。火をすくい取り、小さな空あき瓶びんに納め、ポケットに入れると、人ひと込ごみに紛まぎれ込こんだ――スネイプは何が起こったのかわからずじまいだろう。