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九、彼方へ(11)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:「十人しかいないチームが出場したのは、少なくとも箱根駅伝がテレビ放映されるようになってからは、例がないと思いますね。シー
(单词翻译:双击或拖选)

「十人しかいないチームが出場したのは、少なくとも箱根駅伝がテレビ放映されるように

なってからは、例がないと思いますね。シード権を獲ったら、四年生には留年してもらう

しかないんじゃないですか」

「いや、それはまずいですよ」

  アナウンサーも楽しそうだ。谷中は少し真剣な声になった。

「留年は冗談として、まあ、大丈夫でしょう。寛政大のこの活躍を見て、入部したいと思

う新入生がきっといますよ。強豪校もあっていいですが、まったく走ったことのなかった

若いひとたちが、走るチャンスを与えられるような大学もあっていい。箱根駅伝は、世界

に通用するランナーを育てると同時に、日本の長距離界の裾野を広げるためにある大会な

んですから」

「いいことを言うな、谷中さん」

  と清瀬はつぶやいた。

「だれなんですか、このひと」

「きみは本当に、陸上選手のことをあまり知らないんだな。三十年ぐらいまえに、大和大

のエースだったひとだ。マラソン日本代表で、オリンピックにも出た。いまは実業団の顧

問をしているはずだ」

「へえ」

  世界を舞台に走っていたひとは、やっぱり言うことが違うな、と走は思った。

  画面にちょうど、四区を走るジョージの姿が映しだされた。

「なぜジョージは、にやけながら走ってるんだ?」

「ほんとだ。しまりのない顔ですね」

「そういえば、平塚でジョータも、なんだか力んで赤くなってたな」

「緊張するタイプでもないのに、どうしたんでしょう」

  走が首をかしげたとき、清瀬の携帯に着信があった。清瀬は今度はためらいなく、手ぶ

ら機能のボタンを押す。

「よう、ハイジ。ちょっとまずいことになったぞ」

  ニコチャンからだ。

「どうしたんですか」

  走が思わずそう声を上げると、ニコチャンは少し混乱したようだった。

「あれ、走の番号にかけちゃったか?」

「俺の携帯ですよ」

  清瀬は手ぶら機能を説明する気はないらしい。「なにがあったんですか」

「うーん、走にも聞こえてるのか。だとすると、言っちゃっていいのかねえ」

「いいから、言っちゃってください」

  清瀬の発散する苛立ちのオーラを感知したのか、ニコチャンは話しはじめた。

「双子がな、葉菜ちゃんの気持ちに気づいたんだよ。それで、走り終わったジョータもふ

にゃふにゃ、走りはじめたジョージもふにゃふにゃってわけだ」

  清瀬がちらっと走を見た。なんで俺を見るんだよ、と走は思った。

「いまさら?」

  と、清瀬はため息まじりに携帯に向かって言う。

「そう、いまさら。どうする?」

「どうしようもないでしょうね、気づいてしまったものは。ジョージの走りを見て、必要

ならこっちで対処を考えます」

「了解。じゃ、俺はこれからジョータと、小田原の宿に行く。葉菜ちゃんは横浜でいいの

か?」

  葉菜子は、王子のいる横浜のホテルに泊まることになっていた。四区を走り終えたら、

ジョージも横浜に戻って合流する手はずだ。

「それは変更なしで」

「ジョータに伝えることは?」

「なにも。完璧な走りでしたから」

「そう伝えとく」

  通話を切ると、清瀬は「さて、走」と首の骨を鳴らした。

「今夜、横浜のホテルで喧嘩したりするなよ。俺と王子では、きみたちの乱闘を捌さばく

には心もとないからな」

「喧嘩?  なんでですか?」

  走は真面目に問い返す。清瀬はそんな走をまじまじと眺め、

「最後まで気づかないのは、きみなんだな」

  と笑った。「やっとバスが来たようだ。行こう」

「なんなんですか、ハイジさん。ねえ、ちょっと!」

  旧道をまわって芦ノ湖へ行くバスに、走と清瀬は乗りこんだ。二人がけの座席に並んで

腰を下ろす。狭い道を遠回りしながら登っていくルートだが、国道一号とちがって渋滞は

していないので、かえってよかったかもしれない。

  山に阻まれ、テレビもラジオも、電波をうまく受信できなくなってきた。

「芦ノ湖に着くまでは、情報が入らないな」

  清瀬は水脈を探すみたいに、ラジオのアンテナをあちこちに向けていたが、やがて諦め

たようだ。イヤホンを耳からはずし、窓に肩をもたせかけた。

「ジョージが邪念を払って、走りに集中してくれるといいんだが」

「邪念って、そんな」

  走は苦笑する。葉菜子の気持ちが、ようやく双子に通じたのだ。いいことではないか。

そうだ、いいことだ。それなのに俺は、どうしてなんとなくモヤモヤするんだろう。うま

く走れなくてあせっているときみたいに、胸が苦しい。細胞が不完全燃焼して、体の内側

に無用な熱ばかりが溜まる感じだ。

  走は黙りこみ、 に注がれる清瀬の視線に耐えた。きっとまた、からかわれるんだろう

なと覚悟する。早く走りたかった。言葉にならない曖昧な感情から、早く解き放たれて風

を感じたい。

  暖房であたためられたバスのなかの空気は、眠たいのに眠りの淵に落ちきれないときに

似て、ぼんやりと居心地が悪い。走は清瀬の視線を避けるように、腰をずらしてシートに

深く沈んだ。

「ジョージの意識を、レースのほうに向けさせる必要がある」

  と清瀬は言った。予想に反して真摯な声音だったので、走は目を上げた。清瀬は窓の外

を見ていた。杉の木が窓ガラスに触れそうなほど近くにある。

「きみだったら、ジョージになんと声をかける?」

「そうですね……」

  走は少し考え、答えを言った。

  どういうことなんだろう。葉菜ちゃんが俺を好きってホントかな。

  ジョージの頭のなかは、葉菜子のことでいっぱいだった。

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