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第二十八章 火焰太鼓の出現(1)

时间: 2023-12-11    进入日语论坛
核心提示:第二十八章 火焰太鼓の出現 まったく菊江のいうとおりである。 密室の謎なぞは解けた。そして、今度はいよいよ、誰が密室の殺
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第二十八章 火焰太鼓の出現

 まったく菊江のいうとおりである。

 密室の謎なぞは解けた。そして、今度はいよいよ、誰が密室の殺人を構成したか、そし

て、また、誰が新宮利彦と椿つばき あき子こを、つぎつぎに血祭りにあげていったのか、

それを説き明かすべき段階である。それからまたいかなる動機が、そのような血なまぐさ

い犯行を、あえてさせたかということを。──

「ええ、そ、そ、そう──」

 金田一耕助はさすがにどもった。どもったきり、しばらく黙りこんでいた。かれは菊江

の明るい微笑を憎まずにはいられなかった。

 耕助はこの一瞬を、出来るだけさきにのばしたかったのだ。出来ることならこの仕事か

ら、逃げ出してしまいたいくらいである。それほど、これから試みようとする秘密の解明

は、どすぐろく、陰惨で、かつ、いまわしかった。

 しかし、それは許さるべきことではなく、また、常に真実をさぐりあてようとする犯罪

探求者の良心と、それから、誰でも持っている、あの虚栄心という厄介なしろものが、か

れを煽せん動どうするのである。

 耕助はやっと心をきめたように、重い口をひらいた。

「ぼくはいま、ある確信を持っているのです。しかし、その確信を裏づけるために、もう

一度、ある実験をしてみなけりゃならんと思っているんですが。──」

「実験というと──?」

 等と々ど力ろき警部が眉まゆをひそめた。

「ええ、そう、昨日 子夫人を驚かしたものはなんであったか── 子夫人はいったい何を

発見したのか。──」

「しかし、それなら、昨日もやってみたじゃないか」

 蟇がま仙人の目賀博士が、横眼で耕助をにらみながら、せせら嗤わらうようにわめい

た。

「ええ、そう。しかし、昨日のやりかたは完全ではなかったんです。今日はもっと慎重に

やってみたいんです。とにかく、 子奥さまが、何を発見したかということがわかれば、犯

人についてもわかると思うんです」

 等々力警部は、さぐるように耕助の顔を見ながら、

「それには、もう一度、応接室へいったほうがいいというんですか」

「ええ、そう、そう出来れば──」

 そこで一同はアトリエから、もう一度応接室へいくことになった。黙々とつれだってい

く関係者の周囲を、刑事や警官が、羊の番犬のように取りかこんでいく。もう誰も逃げ出

すことは出来なかったし、逃げ出そうとするものもなかった。

 応接室のまえまで来たとき、金田一耕助は立ちどまって、ためらいがちに美み禰ね子こ

に声をかけた。

「美禰子さん」

「はあ──?」

「あなたや一彦君、それから新宮さんの奥さんは、この部屋へお入りにならないほうがい

いと思うんですけれど」

「あら、どうしてでしょう」

 美禰子の瞳めが急に大きくなる。まるで金田一耕助を、呑のみつくしそうな気色だっ

た。

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