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第二十八章 火焰太鼓の出現(2)

时间: 2023-12-11    进入日语论坛
核心提示:「どうしてといって──」「いいえ、先生」 と、美禰子はキッパリとした調子で、「あたし入りますわ。あたし、何もかも知りたい
(单词翻译:双击或拖选)

「どうしてといって──」

「いいえ、先生」

 と、美禰子はキッパリとした調子で、

「あたし入りますわ。あたし、何もかも知りたいんです。伯お母ばさまだって、一彦さん

だって同じことだと思いますわ。先生」

 美禰子は急にやさしくいって、金田一耕助の腕に手をかけた。

「先生、先生のお気持ちはよくわかります。あたしたちにいやなことを聞かせたくないと

おっしゃるんでしょう。でも、あたし覚悟をきめております。一彦さんだって、伯母さま

だって、同じことだと思うんです」

 それでも金田一耕助が何かいおうとするのを、美禰子はいそいでさえぎって、

「それに、先生、あたしには知る権利があるとお思いになりません? だって、あたし依

頼人よ。こんなこと申し上げては失礼ですけれど、先生をお雇いしたのはあたしなのよ。

まだ一文もお礼、差し上げてませんけれど」

 それから美禰子は一彦と華子を振り返った。

「さあ、伯母さま、一彦さん、入りましょう」

 金田一耕助は首うなだれて、一同のあとから入っていった。

 こういう小こ競ぜり合いがあったので、耕助が入っていったのはいちばん最後だった。

応接室のなかには、羊の群を取りまいて、番犬どもがいかめしく眼を光らせてしゃちこ

ばっている。

 耕助は一同の顔を見まわしたのち、ちょっと困ったように眉まゆをひそめ、それから警

部のそばへよって何やら耳うちした。警部は眉をつりあげて、

「しかし、もし──」

「大丈夫です。ドアの外や、窓の下を見張っていてくだされば。──」

 等々力警部が刑事や警官をあつめて、何やら指令をあたえると、一同はすぐ部屋から出

ていった。金田一耕助はそのなかのひとりをつかまえて、何か低声で話をしていたが、

「あの、新宮さんの奥さん、ちょっと──」

 華はな子こが呼ばれてそばへいくと、三人で何やら話していたが、やがて刑事は出てい

き、間もなく持ってきたのは、銀盆にのっけたウィスキーの角瓶と数個のグラスだった。

 耕助はそれを受け取ると、刑事を部屋から押し出すようにして、なかからぴったりドア

をしめた。それから銀盆を持ったまま、一同のほうを振り返ると、

「さあ、これで、われわれだけになりました。このドアはずいぶん厚いから、ここで話を

することは、たぶん外へは洩もれないでしょう」

 まるで咽の喉どに魚の骨でも、ひっかかっているような声である。

「金田一さん、いったい、何をやらかそうというんだね。われわれにいっぱい振舞ってく

れるというのかい」

 目賀博士がどくどくしくわめいた。

「そうですよ、目賀先生、あなたにはぜひ飲んでいただかねばなりません。つまり、ぼく

は、昨日 子奥さまが、悪魔を発見したときと、同じ状態にみなさんをおきたいんです」

 金田一耕助は銀盆を中央のテーブルのうえにおくと、グラスにウィスキーをついだ。

「さあ、どうぞ」

「じゃ、わしから頂戴するかな」

 目賀博士はふてくされた様子で、グラスを鷲わしづかみにすると、

「一彦君、三島君、遠慮なく飲むがいい。ひょっとすると、それが末まつ期ごの水のかわ

りになるのかも知れないぜ」

 一彦はちょっとなめただけで、すぐにグラスを下においたが、東太郎は勢いよく一息に

あおった。それから目賀博士のほうにむかって、

「先生、昨日、ぼくは何杯ぐらい飲んだでしょうね」

 と、にこにこしながら訊たずねた。

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