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第二十九章 悪魔の記録(8)

时间: 2023-12-11    进入日语论坛
核心提示: 私の頭脳に漠然とした計画がまとまりはじめたのは、おそらくこの頃からだろう。椿子爵のこの自殺と、飯尾豊三郎の相似とを、な
(单词翻译:双击或拖选)

 私の頭脳に漠然とした計画がまとまりはじめたのは、おそらくこの頃からだろう。椿子

爵のこの自殺と、飯尾豊三郎の相似とを、なんらかの形で利用出来ないか。……だから、

霧きりケが峰みねからかえってきて、 あき子こ夫人即ち母から様子をきかれたとき、私は

その死体を椿子爵のようでもあるし、また、違っていたようでもあると、しごく含みのあ

る返事をしておいた。

 美禰子よ。

 おまえも知っているとおり、おまえの母というひとは、とても暗示にかかりやすいひと

なのだ。そうでなくとも子爵の失しつ踪そうを、別の意味にとってひどく恐れていた 子夫

人は、まんまと私の暗示にかかってしまった。なおそのうえに、その後も機会あるごと

に、私が椿子爵の生存をほのめかすものだから、 子夫人は完全に妄想のとりことなった。

 こうして、しだいに気運が醸成されていくのを待って、私はいよいよ計画の第一歩に乗

りだした。第一歩とはいうまでもなく、飯尾に椿子爵の扮ふん装そうをさせて、 子夫人の

まえに出すということである。まえにもいったように、飯尾と子爵は瓜うり二ふたつとい

うほども似ているわけではない。ふたり並べてくらべれば、識別するのはそれほど困難な

ことではなかろう。

 しかし、子爵の失踪後半年あまりもたった今日、飯尾に子爵の扮装をさせれば、もとも

と似ている男だから 子夫人のようなひとを欺くのは、それほど困難なことではなかろう。

私はそれを東劇で実験してみた、その結果は美禰子も知っているとおりである。

 さて、こうして、この家の住人に最初のショックをあたえたのち、すかさず私はまた計

画の一歩をすすめた。いうまでもなく、それがあの砂占いの夜の出来事なのだ。ただ、こ

こではっきり断わっておくが、私はあの晩、玉虫伯爵を殺害する意志は毛頭なかったの

だ。

 いやいや、私には果たして最初から、大伯父や両親に対して殺意があったのだろうか。

自分でもはっきりとはいえないが、それほどの決意も私にはなかったように思う。むろ

ん、私は復ふく讐しゆう心しんにもえていた。出来るだけ残忍な打撃をあたえてやろうと

決心していた。しかし、まさか殺そうとまでは考えていなかった。

 それがいつか殺意というかたちとなって現われてきたのは、やはりこの家の空気のせい

だと思う。新宮利彦と椿 子、それから玉虫公きみ丸まるの三人のあいだにわだかまる、一

種異様な雰囲気は、過去の秘密や、深い事情を知らぬものにも、なにかしら、むかむかす

るような、不潔でいやらしいものを感じさせる。

 その空気が椿子爵を自殺させ、私に殺意を起こさせたのだ。だが、自己弁護はよそう。

 それはさておき、砂占いの夜の私の計画というのは、ただ火焰太鼓の形と、「悪魔が来

りて……」のメロディーによって、三人に挑戦の火ひ蓋ぶたを切ることにあった。

 この時の私のやりかたを、ひょっとすると金田一耕助は感付いているのではないかと思

うが、念のために書き記しておくことにする。

 それより少しまえ、私は庭の落ち葉だめのなかから、風神像を発見して持っていたのだ

が、その台座のうちに火焰太鼓の形を彫り、それを砂占いの部屋にある雷神像ととりかえ

ておいたのだ。そして、雷神のほうはアトリエのドアの外にある、花瓶のなかへかくして

おいた。

 注意して見れば、風神と雷神の区別はすぐつくが、なにしろ薄暗い部屋のなかだし、誰

だってそんなものに関心を払うものはなかったので、私のこの計画は成功したようだ。

ホーム・ライトが消えると同時に、私は砂のうえに風神で判をおした。そして、電気がつ

いてあのレコードのメロディーに驚いて、一同がとび出していったすきに、風神を雷神と

すりかえておこうと思っていたのだ。

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