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第十四章  密室を開く 一(5)

时间: 2023-12-29    进入日语论坛
核心提示:「金田一先生はさっきあの部屋で、バスやトイレをのぞいていらっしゃいましたが、だれか被害者を襲撃するかもしれないという、懸
(单词翻译:双击或拖选)

「金田一先生はさっきあの部屋で、バスやトイレをのぞいていらっしゃいましたが、だれ

か被害者を襲撃するかもしれないという、懸け念ねんでもお持ちですか」

「ああ、そのことについてさっきから申し上げようと思っていたんですが、犯人は最初の

襲撃で失敗している。しかも、陽子さんはいつなんどき意識を回復するかもしれない。そ

のまえにもういちど、今度は決定的な打撃を与ようとして……」

「わかりました。じゃあの部屋へだれか張り込ませましょう」

 さいわいゆくての廊下に私服がふたり立ち話をしていた。いまやこの名琅荘の内外には

警官や私服が充満しているのだ。田原警部補はふたりの私服に命令をつたえた。

「だけど、いいか。ぜったいに静粛を守るんだよ。患者は絶対安静を必要とする状態なん

だからな」

 それからまもなく一同がいきついたのは、この建物の右翼にあたる日本家屋の最先端に

あたっており、四畳半の日本間になっていた。障子の外には久保田刑事が緊張した顔をし

て立っている。

「ここがタマ子の部屋でございます」

 お糸さんが障子をひらくと四畳半の中央に寝床が敷いてあり、仰向けに寝かされたタマ

子の顔は白い布で覆うてあった。小さな二月堂の経机のうえに、線香の煙がたゆとうてい

るのは、お糸さんのせめてもの心尽くしであろう。

 仏の枕下には譲治が、足のほうには井川刑事が包帯をまいた左脚を投げだすようにして

座っているが、ふたりともすっかり意気阻喪したような顔色で、一同の姿を見ても言葉も

出なかった。

 江藤刑事からきいていたであろうにもかかわらず、白布を取ったとき森本医師の顔にう

かんだ恐怖と驚きよう愕がくには異常なものがあった。無理もない。いままで場数をふん

できた金田一耕助ですら、これほど凄惨な仏を見たことはいちどもない。

「先生、死因は絞殺だということはわかってるんです。それを医師としての立場から、た

しかめていただきたいんです。それと死後どれくらい経過しているかということを……」

 田原警部補の声は沈痛そのものである。

 森本医師は無言のままうなずいて、そういう場合医者としてとるべき手順をふんでいた

が、

「そう、死因はやっぱり窒息死のようですな。それから死後の経過時間ですが、十二時間

ははるかにオーバーしているようです。これはむろん解剖の結果をみなければ、正確なこ

とはいえんが……」

「先生!」

 譲治はおびえたような声をあげて、

「タマ子は解剖されるんですか」

「譲治君」

 金田一耕助がそばからなだめるように声をかけた。

「そうしなければならないんだよ、こんな場合にはね。そのほうがカタキを討ちやすいん

だ。譲治君はタマちゃんのカタキを討ちたいんだろ」

「タマ子! タマ子!」

 譲治がワーッと声をあげて泣きだしたので、一同はもらい泣きをせずにはいられなかっ

た。わけても井川刑事は肺腑をえぐられるような気持ちだったにちがいない。鼻をつまら

せて、

「むりはねえやな。可哀そうに。こんなことならゆうべのうちに、あの抜け穴を捜査すべ

きだったんだ。そうしていたらたとえ手遅れになっていたとしても、こんな酷むごたらし

い姿にゃならずにすんだにちがいねえ」

 それをいっては愚痴になると思ったのか、

「譲治君、辛抱おし。タマちゃんの亡なき骸がらはきれいに縫い合わされて、またこちら

へかえってくるからね」

 それから金田一耕助は森本医師のほうへむきなおって、

「ときに、先生、けさの仏さんはどうでした」

「ああ、そうそう、田原君、それについてここに検案書を持ってきたがね。あれは浴槽の

なかで溺死したのではありません。肺臓から採集された水分のなかには、バス・クリニッ

クとやらは検出されなかった。あれは真水によって溺死したんだね。その時刻はだいたい

仏さんのはめていた腕時計の示す時刻と、大差はないものと思ってよろしい。それ以上の

ことは君たちの領分だから、嘴くちばしをはさむのは遠慮しとくがね」

 ちょうどそこへ遺体引きとりのため、自動車が到着したという報告があり、譲治と遺体

とのあいだに劇的シーンが展開されたが、ここでは省略しておこう。たいへん感動的な場

面だったことはいうまでもない。

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