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第十五章  大崩壊 一(1)

时间: 2023-12-29    进入日语论坛
核心提示:第十五章  大崩壊    一 金田一耕助たちが尾形静馬の墓とおぼしい塚を発見するまでのいきさつを、詳述するのは控えよう。
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第十五章  大崩壊

    一

 金田一耕助たちが尾形静馬の墓とおぼしい塚を発見するまでのいきさつを、詳述するの

は控えよう。筆者は筆を惜しむものではないが、そうでなくても、いささか長くなりすぎ

たこの恐ろしい物語を、いくらかでも短縮したほうがよいと思うからである。

 金田一耕助たちがその塚を発見するまでには、たっぷり一時間はかかっていた。冥途の

井戸とよばれるあのクレバスのあたりから、洞窟がうんと狭くなっていることはまえにも

いっておいたが、それは行くほどに進むほどに、網の目のように岐わかれわかれて、世に

も複雑な迷路をかたちづくっていた。

 網の目はあるいは分岐し、あるいは交錯しながら、果てしなく奥へおくへとひろがって

いる。それはさながらいったん迷いこむと、ふたたび出ることができないといわれる、八

や幡わたの藪やぶ知しらずのようなものであった。それにもかかわらず三人が無事に出て

来られたのは、金田一耕助の指導よろしきをえて、三人がたくみに連繫をたもってきたか

らである。

 問題の塚はそういう網の目になった洞窟のおくに、こんもりと盛りあがっていた。そこ

は袋になった洞窟のいきどまりで、天井も低く、しかも洞窟のおくの岩壁がさらにえぐら

れたようになっていて、天然の龕がんを形成しており、それが塚を守っているような形に

なっていた。

 そこには墓石もなければ墓標もない。しかし、それが何者かの墓にちがいないというこ

とは、塚のまえの岩のくぼみに土が盛ってあり、土のなかに線香の灰らしきものが、多量

にまじっていることからでもうかがい知ることができるのである。それのみならず岩のた

いらなところに蠟ろう涙るいのあとが二か所あり、二本立っている竹筒には、樒しきみの

枝が立ててあり、半分皮をむいた蜜み柑かんが三つならべてあったが、樒といい蜜柑とい

い、あまりしなびていないところを見ると、さいきんだれかがお参りしたのにちがいな

い。

 これこそはいまから二十年まえこの洞窟のおくで、ひとしれず非業の最期をとげた尾形

静馬の墓にちがいない。あわれ尾形静馬は二十年間というものを、永えい劫ごう日の目を

みることもないこの洞窟のおくで、だれにもしられずに眠っていたのだ。

 三人は身のすくむような厳粛な思いにうたれて、おもわず塚にむかって合掌した。わけ

ても昭和五年の一件に、執念をもやしつづけてきた井川刑事にとっては、感慨無量なもの

があったであろう。

「金田一先生、そうするとこの塚の底には、左腕のない男の白骨がよこたわっているとい

うことになるのですね」

「そうです、そうです。それによって尾形静馬氏の遺体にちがいないということが、認定

されるのではないでしょうか」

「じゃ金田一先生はこの塚を、あばいたほうがよいとおっしゃるんですか」

 井川刑事は鼻をすするような声である。あまりにも痛ましい尾形静馬の運命に思いをは

せると、その事件に執念をもやしつづけてきただけに、この老刑事の胸はうずくのであ

る。

「それはそうなさるべきでしょうねえ。これじゃ無縁仏もおんなじで、あまりにもお気の

毒です。どこかへ改葬して手厚く供く養ようしてあげるべきだし、警察もそれによってあ

の一件に終止符をうたれるんですね」

「金田一先生、ありがとうございました」

 井川刑事はふかぶかと頭をさげた。

 それからまもなく三人は黙々として塚をあとにしたが、あのクレバスまでたどりつくの

に、たっぷり十五分はかかったのである。そこまでくると洞窟は豁かつ然ぜんとひらけ

て、夢の雪渓の白砂がうつくしく懐中電灯の光のなかで照り輝いた。

「金田一先生」

 田原警部補は大きく息を吸いこむと、

「さっき……と、いってももう昨夜になりますが、昨夜の九時ごろ東京の小山刑事からか

かってきた電話によると、金曜日の夕方から夜へかけての、篠崎氏や柳町さん、それから

殺害された古館氏のアリバイは完全だというんですがね」

 小山刑事は金田一耕助の紹介によって、警視庁の等々力警部に面会し、その協力を仰い

だのである。そして警視庁と手分けをして調査した結果、金曜日の午後の三人のアリバイ

は完全であることが判明した。だれも真野信也と名乗ってこの名琅荘に現れた人物に、匹

敵する人間はいなかったのである。

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