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恶灵(22)

时间: 2021-08-19    进入日语论坛
核心提示:「イヤ、それは霊媒自身については云えるか知れませんが、コントロールは無関係です。『織江さん』の魂が、あの事件に影響されて
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「イヤ、それは霊媒自身については云えるか知れませんが、コントロールは無関係です。『織江さん』の魂が、あの事件に影響されて、嘘を云うなんてことは、考えられません」
 槌野君が思切った様に、顔を赤くして主張した。この一寸法師は、前にも記した通り、会員中でも第一の霊界信者なのだ。彼は社交的な会話では、はにかみ屋で、黙り勝ちだけれど、霊界のこととなると、人が違った様に勇敢になる。
「ウン、そうだ。わしも、槌野説に、賛成だね。現に、我々の『織江さん』は、姉崎未亡人の、惨死を、ちゃんと、云い当てて、いるじゃないか。あれは、嘘を、云わなかった。だから、今度の、予言も、嘘でないと、考えるのが、至当(しとう)だ」
 熊浦氏は、人一人の命にかかわる事を、不遠慮に断言する。
「併し、少くとも、我々の中に犯人がいるという点丈けは、どうも合点(がてん)が出来ませんよ。第一、我々会員には、姉崎さんを殺す様な動機が皆無じゃありませんか。姉崎さんが生前例会に顔出しをしていたということ丈けで、あの殺人事件と、この会とを結びつけて考えるのは、少し変だと思いますね」
 僕が云うと、熊浦氏は皮肉な笑声を立てて、ギラギラ光る眼鏡で僕を睨みつけながら、
「動機がないって? そんな、ことが、分るもんか。なる程、あの人は、表面上は、ただの、会員に、過ぎなかった。だが、物の裏を、考えて、見なくちゃ、いかんよ。裏の方では、会員の内の、誰かと、あの未亡人と、どんな深い、かかり合いが、あったかも知れん。あの人は、若くて、美しい、未亡人だったからね」
 と意味ありげに云った。
 誰も反対説を(とな)えるものはなかった。僕も未亡人が美しかったという論拠には全く同感であった。僕は曽恵子さんの顔ばかりでなく、身体の美しさまで、まざまざと見せつけられていたのだから。それにしても、若し「織江さん」の魂が云った様に、会員の(うち)に下手人がいるのだとしたら、あの美しい身体にむごたらしい血の縞を描いた奴は、あのか細い喉を無残に(えぐ)った奴は、一体この内の誰だろうと、三人の顔を見比べないではいられなかった。
「すると、僕達の内の誰かが、殺人者だということになる訳ですね」
 無闇にスパスパと両切煙草をふかし続けていた園田文学士が、青い顔をして、少し声を震わせて、口をはさんだ。
「そうです、龍ちゃんが、気絶さえ、しなければ、犯人の、名前も、分ったかも知れん。併し、肝腎(かんじん)のミディアムが、病人に、なってしまっては、当分、『織江さん』の魂を、呼出す、見込がない。実に、迷惑な話だ。僕等は、お互に、疑い合わねば、ならん様なことに、なってしまった。どうだ、諸君、ここで、銘々(めいめい)の、身の明りを、立てて、サッパリした、気持で、別れる、ことにしては」
 熊浦氏が提案した。
「身の明りを立てるというのは?」
 園田文学士が聞き返す。
「訳のない、ことです。アリバイを、証明すれば、いいのだ。あの、殺人事件の、起った時間に、諸君がどこに、いたかということを、ハッキリ、させれば、いいのです」
「それはうまい思いつきですね。じゃ、ここで順番にアリバイを申立てようじゃありませんか」
 僕は早速、熊浦氏の提案に賛成して、先ず僕自身のアリバイを説明した。それに続いて、槌野君、園田氏、熊浦氏の順序で、九月二十三日の午後零時半から四時半頃までの行動を打開(うちあ)け合った。

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