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虎牙-密室之谜

时间: 2021-11-10    进入日语论坛
核心提示:密室のなぞ 鉄ばしごは五メートルほどでおわり、足がコンクリートのゆかにつきました。懐中電灯で見ると、そこからまた、トンネ
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密室のなぞ


 鉄ばしごは五メートルほどでおわり、足がコンクリートのゆかにつきました。懐中電灯で見ると、そこからまた、トンネルのような長い道がつづいています。むろん、ここは地下道です。トンネルのかべはコンクリートでかためてあります。
 ほかに道はないのですから、怪人はこのトンネルの中へ、はいって行ったのに、ちがいありません。明智と三人の警官とは、手に手に懐中電灯をふりてらしながら、そこを、奥へ奥へとすすんで行きました。
 十メートルほど向こうを、怪人の走って行く姿が、ボンヤリ見えています。しかし、懐中電灯の光をたよりに、足もとに気をつけながら、すすむのですから、なかなか、あいてに追いつくことができません。
 そのうちに、フッと怪人の姿が、見えなくなりました。どうしたのかと思って、走って行くと、ここはトンネルのまがりかどでした。怪人がそのかどを、まがったために、見えなくなったのです。
 明智探偵たちも、つづいてかどをまがりました。そして、二、三歩すすんだ時、とつぜん、明智はアッと声をたてて、ふみとどまりました。
「あぶないッ。また、おとし穴だッ。」
 懐中電灯でてらしてみると、すぐ目の前に、はば三メートルほどの、道いっぱいの穴が、口をひらいていました。
 怪人はここをどうして通りすぎたのでしょう。かべをつたって、わたるような、足がかりは、なにもありません。のぞいてみると、下は底しれぬ、くらやみです。それでいて、怪人はその穴の向こうを、走って行く姿が、おぼろげに見えています。いったいどうして、このはばの広い穴をこしたのでしょう。
「ア、わかった。穴にわたしてあった板を、あいつが、取りのけたんだ。」
 明智の懐中電灯の光で、その板がてらしだされました。穴の上に橋のように、かけてあった板を、怪人は向こうがわへ、引きあげ、追手がわたれないようにして、逃げたのです。
「よしッ、ぼくがこの穴を飛びこそう。そして、板をもとのように、かければいいんだ。」
 明智探偵は、少年時代からスポーツできたえたからだです。病気をしたといっても、あとの半分はにせやまいだったのですから、三メートルぐらいの幅飛びは、なんでもありません。穴のふちから、数十歩あともどりして、パッとかけだしたかと思うと、ヒラリと穴を飛びこしてしまいました。
 そして、そこにあった長い板を、もちあげ、一度立てておいて、そのはじを、警官たちのほうへ、サーッと倒してよこす。こちらでは、ひとりの警官が、うまくそれをうけて、すばやく板の橋をかけることができました。
 三人の警官はその板をわたって、明智といっしょになり、それからまた、懐中電灯をふりてらして、トンネルの中をすすむのです。
 そんなことで、てまどったので、あいては遠くへ逃げてしまったのではないかと、心配しましたが、見ると、怪人はまだ電灯の光のとどくあたりを、フラフラと歩いています。逃げられるのを、わざと逃げないで、こちらをからかっているような、あんばいなのです。
 いそいで、そのほうへ近づいて行きますと、トンネルの枝道になっているところに、さしかかりました。この地下道は一本道ではなくて、どこかへわかれているのです。しかし、怪人は枝道のほうへは、まがらず、まっすぐ歩いて行きます。
 やがて、向こうにポーッと、うすい光が見えてきました。どうやら、トンネルのつきあたりに、部屋のようになったところがあるらしく、その部屋の中に、うすぐらい電灯がついているようです。
 怪人はマントをヒラヒラさせながら、その光の中へはいりました。やっぱり、こちらをからかっているのか、まるで、よっぱらいのような、フラフラした歩きかたです。その姿が部屋の中の電灯をうけて、ふしぎな影絵のように、ゆらめいていましたが、やがて、ひらいたままのドアの中へ、ヨロヨロとはいったかと思うと、ドアがギーッと音をたてて、しまりました。そして、あたりは、またもとのくらやみになってしまったのです。
「ソレッ。」というので、四人はそこへかけつけ、ドアをひらこうとしましたが、中からかぎをかけたのか、ビクとも動きません。そこで、警官たちが、かわりがわり、たいあたりで、ドアにぶっつかり、見るまに、それをやぶって、中にふみこんで行きました。
 そこは五、六坪のコンクリートの部屋でした。天井もかべもゆかも、すっかりコンクリートでぬりかためた、なんのかざりもなく、イス一つない牢屋のような部屋です。入り口のほかには、ドアもなく、また窓もありません。どこにも逃げだす個所のない、ふくろのような部屋です。
 ところが、どうでしょう。その、まったく逃げ場のない部屋の中に、いまのさき、はいったばかりの怪人は、もう影さえ見えなかったではありませんか。そこには、人間はおろか、ネズミ一ぴきも、いなかったのです。魔法博士の二十面相は、煙のように消えうせてしまったのです。
 警官たちは、持っていた警棒で、ゆかをたたきまわり、四方のかべをたたきまわり、ひとりの警官が、べつの警官の肩にのって、天井までも、たたきまわったのですが、ぜんぶ完全なコンクリートで、秘密戸のようなものはひとつもないことが、たしかめられました。
 地下室のことですから、空気ぬきの四角な穴が、一方のかべの上と下と二ヵ所に、あいていましたが、それは十センチ四方ほどの小さな穴で、そんなところから、人間がぬけだせるはずもありません。
 ひょっとしたら、怪人はこの部屋にはいると見せかけて、じつは、はいらなかったのではないか。そして、トンネルのどこかに、秘密戸でもあって、そこから逃げてしまったのではないか。そう考えたので、明智探偵はドアの外に出て、トンネルのかべを、じゅうぶん、しらべましたが、すこしもうたがわしい個所はないのでした。
「明智さん、こりゃ完全な密室じゃありませんか。」
 警官のうちの警部補の服を着たひとりが、おどろいたような顔で言いました。この警部補は、まえにべつの事件で明智といっしょに働いたことがあって、顔見知りのあいだがらでした。
「密室です。かりに、あいつがこの部屋へはいらなかったとしても、逃げる場所がありません。トンネルに枝道があったけれども、あいつがこのドアに近づいた時には、ぼくたちは枝道を通りすぎていた。だから、あいつはトンネルの中で、ぼくらのわきをすりぬけて逃げたとでも、考えるほかはないが、そんなことは、ぜったいにできっこありませんからね。」
『密室』というのは、探偵小説にはよくでてくることばです。どこにも逃げ道のない、密閉された(しつ)で犯罪がおこなわれ、しかも、その部屋に犯人の姿が見えないという、ふしぎな事件を『密室の犯罪』と言うのです。
 さすがは魔法博士の二十面相、さいごのどたんばになって、みごとな魔術をつかったものです。「名探偵さん、きみにはこの密室のなぞがとけますかね。」と言わぬばかりではありませんか。
 もしこのなぞが明智探偵にとけなかったら、怪人との知恵くらべにまけたことになります。明智はぜがひでも、これをとかねばなりません。
 さて、読者諸君、みなさんも一つ、名探偵といっしょに、このなぞをといてみてはいかがですか。ちょっとしたことに、気がつけば、なんなくとけるはずです。しかし、いままで書いたほかに、このなぞをとく手がかりが、もう一つだけあります。それは、次の章で明智探偵の言ったり、したりすることを、よく気をつけていれば、わかるのです。どうか読みおとさないようにしてください。そして、このなぞをといてみてください。

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