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虎牙-塔上的魔术师

时间: 2021-11-10    进入日语论坛
核心提示:塔上の魔術師 明智探偵は、うすぐらい電灯の、がらんとした部屋のまん中に立って、腕ぐみをして、しばらく考えていましたが、な
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塔上の魔術師
 
 明智探偵は、うすぐらい電灯の、がらんとした部屋のまん中に立って、腕ぐみをして、しばらく考えていましたが、なにを思ったのか、ツカツカと、部屋の一方のかべぎわへ、歩いて行って、いきなり、そこにしゃがむと、十センチ四方ほどの四角な空気ぬきの穴をしらべはじめました。懐中電灯の光を近づけ、穴のそばに顔をくっつけるようにして、いっしんにしらべましたが、
「ウーム、そうかもしれんぞ。」と、ひとりごとを言ったかと思うと、こんどは、その穴の中へ、いきなり、右の手をグッとさし入れて、なにかを、さぐっているようすです。
「何かあるんですか。」
 警部補が、明智の頭の上から、のぞきこむようにして、たずねます。
「いや、何もありません。この穴の向こうがわにも、コンクリートのゆかがあるだけです。」
「すると、向こうにも部屋があるのですね。」
「いや、部屋ではなくて、たぶん廊下のようなところでしょう。さっきのトンネルの枝道が、この向こうがわへ、通じているのかもしれない。」
「まさか、その穴から、ぬけだしたわけじゃないでしょうね。」
「むろん、そんなことは、いくら魔術師だって、できっこありませんよ。」
「それじゃ、あなたが、そこをしらべておられたわけは、なんですか。何かなぞをとくかぎでも見つかったのですか。」
「ほこりですよ。この空気ぬきの穴の中にはほこりがつもっていた。そのほこりに、何かで強くこすったようなあとが、いちめんについているのです。ほこりがすっかり、かき取られてしまっている。この穴にいっぱいになるような、何か大きな、やわらかいものが、そとへ引きだされたあとです。」
「フーン、大きな、やわらかいもの? まさか二十面相が、そういうものに化けて、この小さな穴から、逃げだしたとおっしゃるのじゃありますまいね。」
「むろん、そういう意味ではありません。しかし、ぼくは、このほこりのあとを見て、密室のなぞがとけたように思うのですよ。」
「えッ、なぞがとけた? 明智さん、ほんとうですか。あいつは、いったい、どうしてこの部屋をぬけだしたのです。」
「待ってください。それは、いまにわかります。それよりも、あいつをつかまえるのがかんじんです。ぼくらがこの部屋にはいった時、あいつはまだ、この穴の向こうがわに、いたにちがいないのです。グズグズしていたら、とりかえしのつかないことになります。さあ、この向こうがわへ、行ってみましょう。それには、トンネルの枝道から、まわればいいのです。」
 そこで、四人はやぶれたドアをくぐって、トンネルにひきかえし、さっきの枝道の中へ、はいって行きました。四人とも、懐中電灯をてらしながらです。
 枝道をグングンすすんで行くと、はたして、さっきの部屋の外がわに出ました。かべの上と下に、四角な空気ぬきの穴があるので、それがわかるのです。明智はねんのために、懐中電灯で、下の穴をしらべてみましたが、ほこりのすれたあとが、部屋の中から見たのとそっくりでした。
 怪人はひょっとすると、枝道をもとの直立の鉄ばしごのほうへ、ひきかえしたのかもしれませんが、そちらへ行けば、自分の部屋へ出るばかりで、そこには見はり人が立っているのですから、そんな方角をえらんだとは思われません。やはり、もとへひきかえさないで、さきのほうへ逃げたのでしょう。
 明智探偵はそう考えたので、ためらわず、グングンすすんで行きました。警官たちも、そのあとにしたがいます。すると、まもなく、トンネルはいきどまりになって、そこにまた直立の鉄ばしごが立っていました。
 かまわず、そのはしごをのぼって行きますと、頂上に石のふたのようなものがしまっています。明智はそれを力まかせに、おしてみました。べつにかぎはかけていないとみえて、石のふたはすこしずつひらいていきます。
 やがて、石のふたをとりのけて、四人は穴をはいだしましたが、そこはやはり部屋の中で、一方に小さな窓があり、かすかな光がさしこんでいます。そとは、明かるい月夜なのです。
 見ると、そこは、例の三階の円塔の一階らしく思われました。まるい部屋のまん中に、カタツムリのカラのように、グルグルまわりながらのぼる、ラセン階段がボンヤリと見えています。
 明智探偵は懐中電灯で、塔への出入り口のドアをさがし、そのそばへよって、しらべてみました。
「オヤ、このドアは中から、かけがねが、かかっている。すると、あいつは、塔の上へのぼったんだな。そのほかに行くところはない。」
 いきどまりの塔の上へ逃げるなんて、なんだかへんではありませんか。しかし、あいてはえたいのしれない怪物です。何をやりだすかわかったものではありません。
「ともかく、塔の上まで、のぼってみよう。」
 明智がせんとうになって、四人はラセン階段をのぼって行きました。二階にはだれもいません。つぎは三階、ここにも人の姿は見えません。しかし、明智には、なんだか、いまここを二十面相が通ったばかりのような気がするのです。塔のかべや天井にしかけがあるかもしれません。怪人はまたその中へもぐりこんでしまったのかもしれません。
 ふと気がつくと、窓の外の、はるか下のほうから人のさわぐ声が聞こえてきました。なにか、ただならぬけはいです。
 明智はいそいで窓をひらき、明かるい月の光にてらされた下界をながめました。塔の下の庭に五、六名の警官が立って、上を見あげています。そして口々に何かわめいています。いったい、なにがおこったというのでしょう。
 明智は窓から半身をのりだして、下界の人々に手をふってみました。すると、警官たちは、それに気づいて、てんでに塔の屋根を指さしながら、なにかわめくのです。
「魔法博士が……。」
「屋根の上に……。」と言うようなことばが、まじりあって、聞こえてきます。どうやら、怪人はこの塔の屋根のてっぺんにでもいるらしいのですが、ハッキリしたことはわかりません。塔の窓からでは、いくら、からだをのりだしても、屋根の上は見えないのです。下へおりて、たしかめるほかはありません。
 そこで、明智は、ふたりの警官をこの場の見はりにのこし、警部補といっしょに、塔をかけおり、廊下をまわり、裏口から庭におりてさわいでいる警官たちのところへ行ってみました。そして、塔の屋根をながめますと、人々がさわいだのもむりではありません。そこには、じつに異様な光景が、月の光にてらしだされていたのです。
 塔の屋根はスレートぶきで、とんがり帽子のような形をしています。そのてっぺんに、のような長い鉄棒があり、それにつかまって、魔法博士がスックとつっ立っていたではありませんか。
 大コウモリのような黒いマントが、風にハタハタとひらめき、二つのメガネの玉が、月の光をうけて、キラキラ光っているのさえ見えます。怪人は、大空の月とむら雲を背景にして、いつまでも、そこに、つっ立ったまま、下界をにらみつけていました。
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