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虎牙-少年跟踪队

时间: 2021-11-10    进入日语论坛
核心提示:少年尾行隊 それから、いよいよ怪屋の中を捜索して、二十面相をさがしだすことになり、明智探偵と警部補と、警官たちの一隊は、
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少年尾行隊


 それから、いよいよ怪屋の中を捜索して、二十面相をさがしだすことになり、明智探偵と警部補と、警官たちの一隊は、怪屋の正面にやってきました。
 正面の入り口の石段の両方に、ふたりの警官が見はりをつとめています。
「べつに、かわったことはなかったかね。」
 警部補がたずねますと、ひとりが答えました。
「ハア、あやしいやつは通りませんでした。」
「ここから出入りしたものは、ひとりもなかっただろうね。」
「ずっとまえに、明智さんの少年助手と、四人の子どもが出て行きました。それから、ついいましがた、明智さんがひとりで出て行かれました。」
「えッ、明智さんが? 明智さんはここにいらっしゃるが、この明智さんが、ここから出て行かれたのかね。」
「ハア、そうです。その明智さんです。ちょっと急用ができたからと言って、大いそぎで、門の外へ出て行かれました。」
 これを聞くと、明智探偵はツカツカと、その警官の前に、すすみ出ました。
「その男は、どこかぼくと、ちがってはいなかったかね。」
 そして、よく顔が見えるように、月の光のほうを向いて、警官の鼻の先に、近づくのでした。
 警官はこまったような顔をして、モジモジしました。
「あなたではなかったのでしょうか。ほんとうに、そっくりだったのですが。」
「ぼくじゃない。怪人二十面相はぼくに化けるのが、とくいなんだよ。」
「えッ、それでは、あいつが……。」
 警官たちのあいだに、ただならぬざわめきがおこりました。警部補は顔色をかえて、
「しまった。明智さん。あなたの説明なんか聞いているのじゃなかった。ゆだんでした。明智さん、どうしたものでしょう。いまから追っかけたって、まにあわないし……。」
と、じだんだをふまんばかりです。
 しかし、明智はさわぐけしきもありません。
「イヤ、まだぼくの負けじゃありませんよ。ぼくのほうには万々一の用意がしてある。あいつがぼくに化けて、逃げるかもしれないということは、ちゃんと考えに入れてあったのですよ。天野勇一君はまだ小さいので、横浜のぼくの友人のうちへひきあげさせたが、小林と三人の少年は、帰ったわけではありません。万一、怪人が逃げだした時、尾行するために、この門の外の立ち木のかげに、待機していたのです。」
「しかし、あいつが明智さんに化けたのでは、子どもたちも見のがしたかもしれませんね。」
「それはだいじょうぶです。小林は、そういうことになれています。それに、たとえぼくとそっくりのやつでも、ひとりで門を出る男があったら、かならず尾行するように命じておきました。イヤ、そればかりではありません。もっとおもしろい計画があるのです。見ていてごらんなさい。いまに少年たちが報告に来ますよ。」
 明智がおちつきはらっているので、警官たちもひとまず胸をなでおろしました。そうして、まだほんとうに信じきれないという顔つきで、門のほうをながめるのでした。
 しばらくすると、あんのじょう、くらい門の外から、リスのように、三人の少年がすべりこんできました。そして、すばやく明智探偵の姿を見つけると、その前にかけてきました。読者諸君がよくごぞんじの、少年探偵団員、花田、石川、田村の三少年です。
「先生ッ。」
 花田君が、息せききって、何か言おうとしています。
「あいつがぼくに変装して逃げたのを、尾行したんだね。」
 明智探偵のほうから、報告をしやすくしてやりました。
「そうです。ぼくたち、あいつに見つからないように、うまく尾行しました。」
「大通りのほうへ出て行ったんだね。」
「そうです。そのほかに、逃げ道はありません。ぼくたち三人は、あいつの五十メートルほどあとから、電信柱や、ごみ箱や、いろんなもののかげに、かくれながら、尾行しました。」
「あいつは、すこしも気づかなかったかね。」
「ええ、ちっとも。ぼくたち、小林団長におそわって、いつも練習していますから。」
「ウン、感心、感心、それで、あいつは、うまく自動車に乗ったのかい。」
「ええ、うまくいきました。なんにも知らないで、自動車に乗ってしまいました。」
「行く先はわからなかっただろうね。」
「いいえ、ぼく、こっそり自動車に近づいて、耳をすましていました。」
「ホウ、えらいね。すると?」
「東京へ、と言う声が聞こえました。自動車は東京のほうへ走って行ったのです。」
「よし、それでいい。きみたち、ごくろうだったね。あとはわたしがうまくやるから、きみたちは夜が明けたら、警察のおじさんに、おくってもらって、天野君もつれて、東京に帰りたまえ。きみたちの慰労(いろう)会は、あとでゆっくりやるよ。」
 そして、明智は警部補に向かって、三少年と天野勇一君とを、だれか警官をつけて、東京のおうちへ、おくりとどけてくれるように、たのむのでした。
 警部補はむろん、それをしょうちしましたが、しかし、どうも、ふにおちないという顔つきで、
「自動車で逃がしてしまっても、だいじょうぶなのですか。その自動車というのは、あなたのごぞんじの車なのですか。」と、しんぱいそうに、たずねました。すると、明智はクスクス笑いながら、
「じつは、ぼくのほうで、あいつがその自動車に乗るように、しむけたのですよ。運転台には小林が助手に化けて、乗りこんでいます。小林は変装もなかなかうまいですよ。小林はぼくの知っているガレージへ行って、しっかりした運転手の乗った車を一台借りだしたのです。そして、夜ふけの客をおくった帰り道のように見せかけて、この向こうの大通りに待っていたのです。もし二十面相が逃げだせば、車庫をおさえてあるのだから、歩くほかはない。その時、目の前にあき自動車がいたら、きっとそれに乗るにちがいないと考えたのですよ。」
「フーン、じつによく考えられたものですね。明智さんには、ほんとうに、かぶとをぬぎますよ。それにしても、その運転手と小林君だけで、だいじょうぶでしょうか。あいては、おくそこのしれない魔法使いですからね、どんな手があるかもしれませんぜ。」
「イヤ、それはもう、ぼくにはだいたいわかっているのです。あいつがひとりで逃げだしたとすれば、行く先は一ヵ所しかありません。あいつのさいごのとっておきの手をもちいるのです。それがどんな手だか、ぼくにはもうわかっています。大活劇ですな。いや、大魔術と言ったほうがいいかもしれません。こんどはぼくが魔術師になるのです。」
 明智探偵はニコニコしながら、ひとりの警官のほうをふりむきました。
「きみ、お手数ですが、二十面相の車庫の自動車に、ガソリンを入れさせてくれませんか。そして、どなたか運転のうまいかたがあったら、東京までとばしてほしいのですが……。あいつの車はなかなか優秀ですからね。競走にはもってこいです。」
 私服警官の中にひとり、もと飛行隊にいたことのある、運転の名手がいました。そして、わたしがやりましょうと名のって出たのです。
 明智探偵はいまから二十面相の自動車を、追っかけるつもりなのでしょうか。それとも、なにかべつの考えがあるのでしょうか。

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