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魔法布偶-玩偶小偷

时间: 2021-12-18    进入日语论坛
核心提示:どろぼう人形 神山進一君は、みんなより一足(ひとあし)さきに家へ帰りました。進一君は家の中で、あのあやしい人形を見はってい
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どろぼう人形


 神山進一君は、みんなより一足(ひとあし)さきに家へ帰りました。進一君は家の中で、あのあやしい人形を見はっている役目です。
 夜になって、なにかあやしいことが起こったら、二階の窓から、万年筆がたの懐中電灯を、パッ、パッ、パッ、と三度ずつ、つけたり消したりすることをつづけて、外の少年たちに、知らせる約束でした。この万年筆がたの懐中電灯は、「探偵七つ道具」の一つなのです。
 夜になり、夕ごはんがすみ、勉強の時間がすみ、ベッドにはいるころになっても、べつになにごともおこりません。
 進一君は、昼間の服をきたままベッドにはいりましたが、外で見はりをしている仲間のことを考えると、眠れるものではありません。
「もう九時すぎだから、井上君とノロちゃんは、家へ帰ったかもしれない。だが、マユミさんとチンピラ隊は、まだ残っているだろう。まっ暗やみの中で、なにか起こるのを、じっと待っているだろう。」
 そう思うと、なんだか、みんなにすまないような気がするのでした。
 それから三十分もたったころです。進一君は、なぜか胸がどきどきしてきました。家じゅうの人がみんな寝てしまって、シーンとしずまりかえっています。そのしずかな中を、あの美しいユリ子人形が、こっそり歩いているのではないかと思うと、もうじっとしていられなくなりました。
 進一君はベッドを出て、そっとドアをあけ、廊下へ出ました。電灯が消してあるので、まっ暗です。足音をたてないように、壁をつたって、人形部屋のほうへ歩いていきました。
 進一君はハッとして立ちどまりました。かすかに、ものの動くけはいが感じられたからです。
 そこは、廊下がTの字になっていました。壁にからだをくっつけるようにして見ていますと、むこうの廊下が、ほのかに明るくなったような気がします。
 うす暗い中にもはっきり見える、ゆうぜんもようが、ひらひらとしました。ユリ子人形です。おばけ人形は、白い四角なふろしきづつみのようなものを胸にだきしめて、むこうの廊下を、スーッととおりすぎていきました。
 こんどこそ、夢ではありません。ユリ子人形は、やっぱり生きていたのです。しかし、あの白いふろしきづつみは、いったいなんでしょう?
「あっ、そうだ! あの大きさ、あの四角い形、あれは、『ほのおの宝冠』の皮箱にちがいない。やっぱりそうだった。あいつは宝冠を盗むために、この家へはいりこんできたのだ!」
 進一君は、とっさにそこへ気がつきました。そして、あいてにさとられぬように、あとをつけました。
 ユリ子人形は、廊下のつきあたりまでいくと、そこの階段をのぼりました。階段の上は庭に面した廊下で、いくつもガラス窓がならんでいます。
 おばけ人形は、そのまん中ほどまでいくと、そっとガラス窓を開きました。
「あっ、窓から庭へとびおりるつもりかしら? それなら、なにも二階へあがらなくても、下の廊下の窓を開けばいいのに……。」
 進一君は、ふしぎに思って、ずっとこちらの窓のそばで、ようすをうかがっていました。
 すると、人形は、胸にだいていた白いふろしきづつみを、両手で頭の上にさしあげました。
「おやっ、いったいなにをするんだろう?」
と思うまもなく、白いふろしきづつみは、まっ暗な庭へ、パッとほうりだされたではありませんか。
 白いものが、スーッと曲線をえがいて、下の地面へ落ちていくのが見えました。
「あっ! わかった。庭のやみの中に、だれかが待ちうけているのだ。そして、ふろしきづつみを受けとって、逃げだすつもりなんだ!」
 進一君は、それと気づくと、そこの空部屋のドアを、そっと開いてすべりこみ、おもてがわに面した窓に近づいて、音のしないようにそれを開くと、万年筆がたの懐中電灯をとり出して、パッ、パッ、パッと三度ずつ、つけたり消したりすることを、なんどもつづけるのでした。
         ×         ×         ×
 そのとき、へいの外のまっ暗な道に、ヘッドライトを消した一台の自動車がとまっていました。
 まっ黒な服をきた男が、白いふろしきづつみをかかえて、へいをのりこえ、そこへ、走ってきたかと思うと、開いていたうしろのドアから、自動車の中にとびこみました。すると自動車は、音もなく動きだし、どことも知れず遠ざかっていくのでした。
 そのとき、自動車のうしろで、みょうなことが起こっているのを、怪人物は、すこしも気づかなかったようです。
 男がへいをのりこして走ってくるまでは、自動車のうしろの荷物を入れるトランクのふたが、三センチほど開いていました。
 それが、男の足音をきくと、ちょうど敵におそわれた貝が、貝がらの口をとじるように、ピッタリしまったではありませんか。
 どうやら、トランクの中に人間がかくれているらしいのです。それはチンピラ隊のひとりではないでしょうか。それとも、もしかしたら、男姿のマユミさんがトランクの中に身をひそめて、怪人物のすみかをたしかめようとしているのではないでしょうか。

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