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魔法布偶-玩偶由黎子的秘密

时间: 2021-12-18    进入日语论坛
核心提示:ユリ子人形の秘密 進一君は、懐中電灯のあいずをしておいてから、すばやくかけ出しました。ユリ子人形がサナエちゃんの人形部屋
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ユリ子人形の秘密


 進一君は、懐中電灯のあいずをしておいてから、すばやくかけ出しました。ユリ子人形がサナエちゃんの人形部屋へもどらないうちに、さきまわりをして、待ちかまえているつもりなのです。
 進一君は、こんやは、はじめからその計画でした。いままで、ユリ子人形を追っかけたときは、人形よりもあとから、人形部屋へはいったのです。すると、そこにいるのはいつも、たたけばこちこちと音のする、ほんとうの人形でした。
 ですから進一君は、生きて動く人形が、こちこちの人形とかわるところを、見てやりたいと思いました。それには、人形よりさきまわりをして、人形部屋の中に、かくれていなければならないのです。
 進一君は、いまこそ、さきまわりをするときだと思いました。
 ユリ子人形は、あの四角いふろしきづつみをなげてから、そのまま窓のところに立って、じっとまっ暗な庭を見おろしていました。下にいる男が、うまくつつみを受けとって逃げだすのを、たしかめようとしているのです。
 そのとき進一君が、懐中電灯のあいずをした窓は、ユリ子人形のいる窓よりも、ずっと人形部屋に近かったので、だいじょうぶ、さきまわりができるのです。
 進一君は、足音をたてないようにかけ出して、人形部屋へはいりました。そして壁のスイッチをおすと、パッと電灯がつきました。
 その光で、ひと目、部屋の中を見たとき、進一君は、「あっ!」と声をたてて、立ちすくんでしまいました。
 いつのまにかユリ子人形が、ちゃんと、部屋に帰っていたからです。
「そんなはずはない。廊下は一本なんだから、ぼくのほうがはやかったにきまっている。ユリ子人形は、まだ廊下をはんぶんも歩かないころだ。」
 進一君は、そう考えました。それにまちがいはないのです。
「はてな?」と、こくびをかしげていましたが、やがて、ハッとあることに気がつきました。
「あっ! そうだ。ユリ子人形はふたりいるんだ。ひとつは、こちこちの、ほんとうの人形、もうひとつは、そっくり同じ着物をきた、生きた人間! そうだ! そうにきまっている。いままで、どうして、そこへ気がつかなかったのだろう。
 ぼくが追っかけてきたときには、人間のほうは、おしいれの中かなんかにかくれてしまって、人形のほうだけが、いすにこしかけているもんだから、ごまかされたんだ。生きた人間がいっぺんに、こちこちの人形にかわってしまったように見えたんだ。
 それじゃこんどは、こっちが、おしいれの中にかくれて、あいつの帰ってくるのを待ちぶせしてやろう。」
 進一君は、とっさのあいだに、これだけのことを考えました。そして、すばやくおしいれにはいって、ふすまを細めに開き、じっと、ようすをうかがっていました。
 すると、こつ、こつ、こつ、こつと、廊下に、人形の足音が、聞こえてきたではありませんか。あくまで人形が歩いていると思わせるために、足になにか、かたいものをはいているのでしょう。つまり、人形が生きて動くという、怪談をつくり出して、みんなをおどかそうとしているのです。
 進一君は、息をころして、ふすまのすきまから目をみはっていました。心臓のどきどきする音が聞こえるほどです。
 ドアがスーッと開きました。ああ、はいってきたのです。ユリ子人形が、はいってきたのです。
 こちらにこしかけているユリ子人形、ドアのところに立っているユリ子人形、そっくりです。着物のもようも、帯も、そして、顔までも。
 長いふり袖、はでなゆうぜんもよう、ピカピカ光るきんらんの帯、美しい人形がふたりならんでいるのです。
 進一君は、息もできないほどでした。こんなふしぎなことが、あるものでしょうか、人形とそっくりの顔をした少女が、もうひとりいるなんて。
 いや、そうではありません。少女が人形に似ているのではなくて、この少女をモデルにして、人形をつくったにちがいありません。それならべつに、ふしぎでもなんでもないのです。
 ユリ子人形とそっくりの少女は、ドアの前をはなれて、こちらへ歩いてきます。やっぱり、このおしいれの中へかくれるつもりでしょう。
 進一君は、グッと心をひきしめました。このぶきみな少女と、たたかわねばならないのです。
 少女は、もう二メートルほどに近づきました。一メートルになりました。いまです!
 進一君は、パッとふすまを開いて、おしいれの中からとび出しました。
「あっ!」
 少女が、おどろきの叫び声をたてました。そして、くるっとうしろをむくと、いきなり、ドアのほうへかけ出すのでした。
「まてっ!」
 進一君も、すぐに、そのあとを追いました。ドアをとび出して、廊下を走りました。
 少女は、走りながら、帯をといています。帯が、すっかりとけました。庭にめんした窓に走りより、そこに出ているくぎに、帯のはじをひっかけました。そして、あっと思うまに、少女は、窓の外へとび出したのです。
 進一君も、その窓へかけつけました。少女はくぎにひっかけた帯をつたって、庭へおりていきます。そして、パッと地面へとびおりました。
「おうい、だれかきてくれえ。……ユリ子人形をつかまえてくれえ……。」
 進一君は、ありったけの声を、ふりしぼって叫びました。そして、じぶんも、帯をつたって、庭へおりていくのです。
 少女は庭におりると、へいのほうへ走りながら、ふり袖の着物をぬぎすててしまいました。その下に、黒のうすいワンピースを着ていたのです。
 進一君も、庭へとびおりました。そして少女のあとを追いながら、
「おうい、はやくだれか、ユリ子人形をつかまえてくれえ……。」
と叫びましたが、だれも家の中から出てくるようすがありません。
 少女はもう、へいによじのぼっていました。かるわざ師のように、身の軽いやつです。進一君もへいの下にかけつけて、少女の足をひっぱろうとしましたが、もうまにあいません。へいの上に、すっくと立った少女のすがたは、パッと、外の道路へとびおりてしまいました。
 それにしても、この少女は、このあいだから、いったいどこにかくれていたのでしょう。ずっと、おしいれの中にいるわけにはいきません。ひょっとしたら、あの黒いワンピースを着て、ふり袖や帯をかかえて、毎晩、外からしのびこんでいたのかもしれません。

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