親類のものから西洋製のナイフを
庭を東へ二十歩に行き
この外いたずらは大分やった。大工の
おやじはちっともおれを
母が病気で死ぬ
母が死んでからは、おやじと兄と三人で
その時はもう仕方がないと観念して先方の云う通り勘当されるつもりでいたら、十年来召し使っている
母が死んでから清はいよいよおれを可愛がった。時々は小供心になぜあんなに可愛がるのかと不審に思った。つまらない、
清が物をくれる時には必ずおやじも兄も居ない時に限る。おれは何が嫌いだと云って人に隠れて自分だけ得をするほど嫌いな事はない。兄とは無論仲がよくないけれども、兄に隠して清から
それから清はおれがうちでも持って独立したら、
母が死んでから五六年の間はこの状態で暮していた。おやじには叱られる。兄とは喧嘩をする。清には菓子を貰う、時々賞められる。別に望みもない。これでたくさんだと思っていた。ほかの小供も
母が死んでから六年目の正月におやじも卒中で亡くなった。その年の四月におれはある私立の中学校を卒業する。六月に兄は商業学校を卒業した。兄は何とか会社の九州の支店に口があって
兄とおれはかように分れたが、困ったのは清の行く先である。兄は無論連れて行ける身分でなし、清も兄の尻にくっ付いて九州
九州へ立つ二日前兄が下宿へ来て金を六百円出してこれを資本にして
おれは六百円の使用法について寝ながら考えた。商買をしたって
三年間まあ
卒業してから八日目に校長が呼びに来たから、何か用だろうと思って、出掛けて行ったら、四国辺のある中学校で数学の教師が入る。月給は四十円だが、行ってはどうだという相談である。おれは三年間学問はしたが実を云うと教師になる気も、
引き受けた以上は
家を
いよいよ約束が極まって、もう立つと云う三日前に清を
出立の日には朝から来て、いろいろ世話をやいた。来る