二三年前、田中さん(田中喜一、東京高等工業学校教授)から頼まれたのです。その頃、頼みに来て下さった方は、もうご卒業なさったでしょう。それ以来、数十回のご依頼を受けましたがみんなおことわりしました。ことわるのは面白いからではなく、
私は専門があなた方とは全然ちがっています。こんな機会でなければ、顔を
まだ小供のとき、財産がなかったので、一人で食わなければならないという事は知っていました。忙がしくなく時間づくめでなくて、飯が食えるという事について非常になやみました。しかし立派な技術を持ってれば変人でも、
私はかつてある所で頼まれて講演したとき、日本現代の開化という題で話しました。今日は題はない、分らなかったから、
その講演のとき開化の definition を定めました。開化とは人間の energy で、これが二つの異った方向に
すなわちあなた方とはかく反対になっているのです。二つのものの性質を概括していうときは、あなた方の方は規律で行き、私どもの方は不規律で行く。その代り報酬はごく悪い。金持になる人なりたい人は、規律に服従せねばならない。
あなた方の方は mechanical science の応用で私どもの方は mental なのだから割がいいようだ。けれども実は大変に損をしているのです。しかしあなた方は自由が少いが私どもは自由というものがなければできない仕事であります。なおいいかうればあなた方は仕事に服従して我というものをなくなさなければできないのです。各自個々勝手な方面へ行ったなら、仕事はできない。私どもの方は我を発揮せなければ、何もできませぬ。
そこで、あなた方の方でする仕事というものを見ると普遍的すなわち universal の性質を持っている。私どもの方は universal でなくて personal の性質を持っています。なお