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永日小品(えいじつしょうひん)--柿

时间: 2020-11-30    进入日语论坛
核心提示: 喜(き)いちゃんと云う子がいる。滑(なめ)らかな皮膚(ひふ)と、鮮(あざや)かな眸(ひとみ)を持っているが、頬(ほお)の色は発育の
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 ()いちゃんと云う子がいる。(なめ)らかな皮膚(ひふ)と、(あざや)かな(ひとみ)を持っているが、(ほお)の色は発育の好い世間の子供のように冴々(さえざえ)していない。ちょっと見ると一面に黄色い心持ちがする。御母(おっか)さんがあまり可愛(かわい)がり過ぎて表へ遊びに出さないせいだと、出入りの女髪結(おんなかみゆい)が評した事がある。御母さんは束髪の流行(はや)る今の世に、昔風の(まげ)を四日目四日目にきっと()う女で、自分の子を喜いちゃん喜いちゃんと、いつでも、ちゃん(づけ)にして呼んでいる。このお(っか)さんの上に、また切下(きりさげ)御祖母(おばあ)さんがいて、その御祖母さんがまた喜いちゃん喜いちゃんと呼んでいる。喜いちゃん御琴(おこと)御稽古(おけいこ)に行く時間ですよ。喜いちゃんむやみに表へ出て、そこいらの子供と遊んではいけませんなどと云っている。
 ()いちゃんは、これがために滅多(めった)に表へ出て遊んだ事がない。もっとも近所はあまり上等でない。前に塩煎餅屋(しおせんべいや)がある。その隣に瓦師(かわらし)がある。少し先へ行くと下駄(げた)の歯入と、()かけ錠前直(じょうまえなお)しがある。ところが喜いちゃんの(うち)は銀行の御役人である。(へい)のなかに松が植えてある。冬になると植木屋が来て狭い庭に枯松葉(かれまつば)を一面に敷いて行く。
 喜いちゃんは仕方がないから、学校から帰って、退屈になると、裏へ出て遊んでいる。裏は御母(おっか)さんや、御祖母(おばあ)さんが張物(はりもの)をする所である。よしが洗濯をする所である。暮になると向鉢巻(むこうはちまき)の男が(うす)(かつ)いで来て、(もち)()く所である。それから漬菜(つけな)に塩を振って(たる)へ詰込む所である。
 喜いちゃんはここへ出て、御母さんや御祖母さんや、よしを相手にして遊んでいる。時には相手のいないのに、たった一人で出てくる事がある。その時は浅い生垣(いけがき)の間から、よく裏の長屋を(のぞ)き込む。
 長屋は五六軒ある。生垣の下が三四尺(がけ)になっているのだから、喜いちゃんが覗き込むと、ちょうど上から都合よく見下(みおろ)すようにできている。喜いちゃんは子供心に、こうして裏の長屋を見下すのが愉快なのである。造兵へ出る(たつ)さんが肌を抜いで酒を()んでいると、御酒を呑んでてよと御母さんに話す。大工の源坊(げんぼう)手斧(ておの)()いでいると、何か磨いでてよと御祖母さんに知らせる。そのほか喧嘩(けんか)をしててよ、焼芋(やきいも)を食べててよなどと、見下した通りを報告する。すると、よしが大きな声を出して笑う。御母さんも、御祖母さんも面白そうに笑う。喜いちゃんは、こうして笑って貰うのが一番得意なのである。
 喜いちゃんが裏を覗いていると、時々源坊の(せがれ)の与吉と顔を合わす事がある。そうして、三度に一度ぐらいは話をする。けれども喜いちゃんと与吉だから、話の合う訳がない。いつでも喧嘩(けんか)になってしまう。与吉がなんだ(あお)(ぶく)れと下から云うと、喜いちゃんは上から、やあい鼻垂らし小僧、貧乏人、と軽侮(さげすむ)ように丸い(あご)をしゃくって見せる。一遍は与吉が怒って下から物干竿(ものほしざお)を突き出したので、喜いちゃんは驚いて(うち)へ逃げ込んでしまった。その次には、喜いちゃんが、毛糸で奇麗(きれい)(かが)った護謨毬(ゴムまり)崖下(がけした)へ落したのを、与吉が拾ってなかなか渡さなかった。御返しよ、(ほう)っておくれよ、よう、と精一杯にせっついたが与吉は毬を持ったまま、上を見て威張って突立(つった)っている。(あや)まれ、詫まったら返してやると云う。喜いちゃんは、誰が詫まるものか、泥棒と云ったまま、裁縫(しごと)をしている御母さんの(そば)へ来て泣き出した。御母さんはむきになって、表向(おもてむき)よしを取りにやると、与吉の御袋がどうも御気の毒さまと云ったぎりで毬はとうとう喜いちゃんの手に帰らなかった。
 それから三日()って、喜いちゃんは大きな赤い(かき)を一つ持って、また裏へ出た。すると与吉が例の通り崖下へ寄って来た。喜いちゃんは生垣の間から赤い柿を出して、これ上げようかと云った。与吉は下から柿を(にら)めながら、なんでえ、なんでえ、そんなもの()らねえやとじっと動かずにいる。要らないの、要らなきゃ、およしなさいと、喜いちゃんは、垣根から手を引っ込めた。すると与吉は、やっぱりなんでえ、なんでえ、()ぐるぞと云いながらなおと崖の下へ寄って来た。じゃ欲しいのと喜いちゃんはまた柿を出した。欲しいもんけえ、そんなものと与吉は大きな眼をして、見上げている。
 こんな問答を四五遍繰返(くりかえ)したあとで、喜いちゃんは、じゃ上げようと云いながら、手に持った柿をぱたりと崖の下に落した。与吉は周章(あわて)て、泥の着いた柿を拾った。そうして、拾うや否や、がぶりと横に食いついた。
 その時与吉の鼻の穴が(ふる)えるように動いた。厚い(くちびる)が右の方に(ゆが)んだ。そうして、食いかいた柿の一片(いっぺん)をぺっと吐いた。そうして懸命の憎悪(ぞうお)(ひとみ)(うち)(あつ)めて、(しぶ)いや、こんなものと云いながら、手に持った柿を、喜いちゃんに(ほう)りつけた。柿は喜いちゃんの頭を通り越して裏の物置に当った。喜いちゃんは、やあい食辛抱(くいしんぼう)と云いながら、()()して(うち)這入(はい)った。しばらくすると喜いちゃんの家で大きな笑声が聞えた。

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