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永日小品(えいじつしょうひん)--火鉢

时间: 2020-11-30    进入日语论坛
核心提示: 眼が覚(さ)めたら、昨夜(ゆうべ)抱(だ)いて寝た懐炉(かいろ)が腹の上で冷たくなっていた。硝子戸越(ガラスどごし)に、廂(ひさ
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 眼が()めたら、昨夜(ゆうべ)()いて寝た懐炉(かいろ)が腹の上で冷たくなっていた。硝子戸越(ガラスどごし)に、(ひさし)の外を眺めると、重い空が幅三尺ほど(なまり)のように見えた。胃の痛みはだいぶ()れたらしい。思い切って、床の上に起き上がると、予想よりも寒い。窓の下には昨日(きのう)の雪がそのままである。
 風呂場は氷でかちかち光っている。水道は(こお)()いて、(せん)()かない。ようやくの事で温水摩擦(おんすいまさつ)を済まして、茶の間で紅茶を茶碗(ちゃわん)に移していると、二つになる男の子が例の通り泣き出した。この子は一昨日(おととい)も一日泣いていた。昨日も泣き続けに泣いた。(さい)にどうかしたのかと聞くと、どうもしたのじゃない、寒いからだと云う。仕方がない。なるほど泣き方がぐずぐずで痛くも苦しくもないようである。けれども泣くくらいだから、どこか不安な所があるのだろう。聞いていると、しまいにはこっちが不安になって来る。時によると小悪(こにく)らしくなる。大きな声で(しか)りつけたい事もあるが、何しろ、叱るにはあまり小さ過ぎると思って、つい我慢をする。一昨日も昨日もそうであったが、今日もまた一日そうなのかと思うと、朝から心持が好くない。胃が悪いのでこの頃は朝飯(あさめし)を食わぬ(おきて)にしてあるから、紅茶茶碗を持ったまま、書斎へ退(しりぞ)いた。
 火鉢(ひばち)に手を翳して、少し(あっ)たまっていると、子供は向うの方でまだ泣いている。そのうち(てのひら)だけは(けむ)が出るほど熱くなった。けれども、背中から肩へかけてはむやみに寒い。ことに足の先は冷え切って痛いくらいである。だから仕方なしにじっとしていた。少しでも手を動かすと、手がどこか冷たい所に触れる。それが(とげ)にでも(さわ)ったほど神経に(こた)える。首をぐるりと回してさえ、(くび)の付根が着物の(えり)にひやりと(すべ)るのが()えがたい感じである。自分は寒さの圧迫を四方から受けて、十畳の書斎の真中に(すく)んでいた。この書斎は板の間である。椅子を用いべきところを、(じゅうたん)を敷いて、普通の(たたみ)のごとくに想像して坐っている。ところが敷物が狭いので、四方とも二尺がたは、つるつるした板の間が()()しに光っている。じっとしてこの板の間を眺めて、(すく)んでいると、男の子がまだ泣いている。とても仕事をする勇気が出ない。
 ところへ(さい)がちょっと時計を拝借と這入(はい)って来て、また雪になりましたと云う。見ると、(こま)かいのがいつの間にか、降り出した。風もない濁った空の途中から、静かに、急がずに、冷刻に、落ちて来る。
「おい、去年、子供の病気で、煖炉(ストーブ)()いた時には炭代がいくら()ったかな」
「あの時は月末(つきずえ)に廿八円払いました」
 自分は妻の答を聞いて、座敷(ざしき)煖炉を断念した。座敷煖炉は裏の物置に(ころ)がっているのである。
「おい、もう少し子供を静かにできないかな」
 妻はやむをえないと云うような顔をした。そうして、云った。
「お(まさ)さんが御腹(おなか)が痛いって、だいぶ苦しそうですから、林さんでも頼んで見て貰いましょうか」
 お政さんが二三日寝ている事は知っていたがそれほど悪いとは思わなかった。早く医者を呼んだらよかろうと、こっちから(うなが)すように注意すると、妻はそうしましょうと答えて、時計を持ったまま出て行った。(ふすま)()てるとき、どうもこの部屋の寒い事と云った。
 まだ、かじかんで仕事をする気にならない。実を云うと仕事は山ほどある。自分の原稿を一回分書かなければならない。ある未知の青年から頼まれた短篇小説を二三篇読んでおく義務がある。ある雑誌へ、ある人の(さく)を手紙を付けて紹介する約束がある。この二三箇月中に読むはずで読めなかった書籍は机の横に(うずた)かく積んである。この一週間ほどは仕事をしようと思って机に向うと人が来る。そうして、皆何か相談を持ち込んでくる。その上に胃が痛む。その点から云うと今日は幸いである。けれども、どう考えても、寒くて億劫(おっくう)で、火鉢(ひばち)から手を離す事ができない。
 すると玄関に車を横付けにしたものがある。下女が来て長沢さんがおいでになりましたと云う。自分は火鉢の(そば)に竦んだまま、上眼遣(うわめづかい)をして、這入(はい)って来る長沢を見上げながら、寒くて動けないよと云った。長沢は懐中(ふところ)から手紙を出して、この十五日は旧の正月だから、是非都合してくれとか何とか云う手紙を読んだ。相変らず金の相談である。長沢は十二時過に帰った。けれども、まだ寒くてしようがない。いっそ湯にでも行って、元気をつけようと思って、手拭(てぬぐい)()げて玄関へ出かかると、御免下(ごめんくだ)さいと云う吉田に出っ食わした。座敷へ上げて、いろいろ身の上話を聞いていると、吉田はほろほろ涙を流して泣き出した。そのうち奥の方では医者が来て何だかごたごたしている。吉田がようやく帰ると、子供がまた泣き出した。とうとう湯に行った。
 湯から上ったら始めて()ったかになった。晴々(せいせい)して、(うち)へ帰って書斎に這入ると、洋灯(ランプ)()いて窓掛(まどかけ)が下りている。火鉢には新しい切炭(きりずみ)()けてある。自分は座布団(ざぶとん)の上にどっかりと坐った。すると、妻が奥から寒いでしょうと云って蕎麦湯(そばゆ)を持って来てくれた。お政さんの容体(ようだい)を聞くと、ことによると盲腸炎になるかも知れないんだそうですよと云う。自分は蕎麦湯を手に受けて、もし悪いようだったら、病院に入れてやるがいいと答えた。妻はそれがいいでしょうと茶の間へ引き取った。
 (さい)が出て行ったらあとが急に静かになった。全くの雪の()である。泣く子は幸いに寝たらしい。熱い蕎麦湯(そばゆ)(すす)りながら、あかるい洋灯(ランプ)の下で、()ぎ立ての切炭(きりずみ)のぱちぱち鳴る音に耳を傾けていると、赤い火気(かっき)が、囲われた灰の中で(ほのか)に揺れている。時々薄青い(ほのお)が炭の(また)から出る。自分はこの火の色に、始めて一日の暖味(あたたかみ)を覚えた。そうしてしだいに白くなる灰の表を五分ほど見守っていた。

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