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永日小品(えいじつしょうひん)--猫の墓

时间: 2020-11-30    进入日语论坛
核心提示: 早稲田へ移ってから、猫がだんだん瘠やせて来た。いっこうに小供と遊ぶ気色けしきがない。日が当ると縁側えんがわに寝ている。
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  早稲田へ移ってから、猫がだんだんせて来た。いっこうに小供と遊ぶ気色けしきがない。日が当ると縁側えんがわに寝ている。前足をそろえた上に、四角なあごを載せて、じっと庭の植込うえこみを眺めたまま、いつまでも動く様子が見えない。小供がいくらそのそばで騒いでも、知らぬ顔をしている。小供の方でも、初めから相手にしなくなった。この猫はとても遊び仲間にできないと云わんばかりに、旧友を他人扱いにしている。小供のみではない、下女はただ三度のめしを、台所のすみに置いてやるだけでそのほかには、ほとんど構いつけなかった。しかもその食はたいてい近所にいる大きな三毛猫が来て食ってしまった。猫は別におこる様子もなかった。喧嘩けんかをするところを見たためしもない。ただ、じっとして寝ていた。しかしその寝方にどことなく余裕ゆとりがない。んびり楽々と身を横に、日光をりょうしているのと違って、動くべきせきがないために――これでは、まだ形容し足りない。ものうさのをある所まで通り越して、動かなければさびしいが、動くとなお淋しいので、我慢して、じっと辛抱しているように見えた。その眼つきは、いつでも庭の植込を見ているが、れはおそらく木の葉も、幹の形も意識していなかったのだろう。青味がかった黄色い瞳子ひとみを、ぼんやりところに落ちつけているのみである。彼れがうちの小供から存在を認められぬように、自分でも、世の中の存在を判然はっきりと認めていなかったらしい。

 それでも時々は用があると見えて、外へ出て行く事がある。するといつでも近所の三毛猫から(おっ)かけられる。そうして、(こわ)いものだから、縁側を飛び上がって、立て切ってある障子(しょうじ)を突き破って、囲炉裏(いろり)の傍まで逃げ込んで来る。家のものが、彼れの存在に気がつくのはこの時だけである。彼れもこの時に限って、自分が生きている事実を、満足に自覚するのだろう。
 これが(たび)重なるにつれて、猫の長い尻尾(しっぽ)の毛がだんだん抜けて来た。始めはところどころがぽくぽく穴のように落ち込んで見えたが、(のち)には赤肌(あかはだ)に脱け広がって、見るも気の毒なほどにだらりと垂れていた。彼れは万事に疲れ果てた、体躯(からだ)()し曲げて、しきりに痛い局部を()め出した。
 おい猫がどうかしたようだなと云うと、そうですね、やっぱり年を取ったせいでしょうと、(さい)至極(しごく)冷淡である。自分もそのままにして(ほう)っておいた。すると、しばらくしてから、今度は三度のものを時々吐くようになった。咽喉(のど)の所に大きな波をうたして、(くしゃみ)とも、しゃくりともつかない苦しそうな音をさせる。苦しそうだけれども、やむをえないから、気がつくと表へ追い出す。でなければ(たたみ)の上でも、布団(ふとん)の上でも容赦(ようしゃ)なく汚す。来客の用意に(こしら)えた八反(はったん)座布団(ざぶとん)は、おおかた彼れのために汚されてしまった。
「どうもしようがないな。腸胃(ちょうい)が悪いんだろう、宝丹(ほうたん)でも水に()いて飲ましてやれ」
 (さい)は何とも云わなかった。二三日してから、宝丹を飲ましたかと聞いたら、飲ましても駄目です、口を()きませんという答をした(あと)で、魚の骨を食べさせると吐くんですと説明するから、じゃ食わせんが好いじゃないかと、少し(けん)どんに叱りながら書見をしていた。
 猫は吐気(はきけ)がなくなりさえすれば、依然として、おとなしく寝ている。この頃では、じっと身を(すく)めるようにして、自分の身を支える縁側(えんがわ)だけが便(たより)であるという風に、いかにも切りつめた蹲踞(うずく)まり方をする。眼つきも少し変って来た。始めは近い視線に、遠くのものが映るごとく、悄然(しょうぜん)たるうちに、どこか落ちつきがあったが、それがしだいに怪しく動いて来た。けれども眼の色はだんだん沈んで行く。日が落ちて(かす)かな稲妻(いなずま)があらわれるような気がした。けれども(ほう)っておいた。妻も気にもかけなかったらしい。小供は無論猫のいる事さえ忘れている。
 ある晩、彼は小供の寝る夜具の(すそ)腹這(はらばい)になっていたが、やがて、自分の()った魚を取り上げられる時に出すような唸声(うなりごえ)()げた。この時変だなと気がついたのは自分だけである。小供はよく寝ている。妻は針仕事に余念がなかった。しばらくすると猫がまた(うな)った。妻はようやく針の手をやめた。自分は、どうしたんだ、夜中に小供の頭でも(かじ)られちゃ大変だと云った。まさかと妻はまた襦袢(じゅばん)(そで)を縫い出した。猫は折々唸っていた。
 明くる日は囲炉裏(いろり)(ふち)に乗ったなり、一日唸っていた。茶を()いだり、薬缶(やかん)を取ったりするのが気味が悪いようであった。が、夜になると猫の事は自分も妻もまるで忘れてしまった。猫の死んだのは実にその晩である。朝になって、下女が裏の物置に(まき)を出しに行った時は、もう硬くなって、古い(へっつい)の上に倒れていた。
 妻はわざわざその死態(しにざま)を見に行った。それから今までの冷淡に()()えて急に騒ぎ出した。出入(でいり)の車夫を頼んで、四角な墓標を買って来て、何か書いてやって下さいと云う。自分は表に猫の墓と書いて、裏にこの下に稲妻(いなずま)起る(よい)あらんと(したた)めた。車夫はこのまま、()めても好いんですかと聞いている。まさか火葬にもできないじゃないかと下女が(ひや)かした。
 小供も急に猫を可愛(かわい)がり出した。墓標の左右に硝子(ガラス)(びん)を二つ()けて、(はぎ)の花をたくさん()した。茶碗(ちゃわん)に水を()んで、墓の前に置いた。花も水も毎日取り替えられた。三日目の夕方に四つになる女の子が――自分はこの時書斎の窓から見ていた。――たった一人墓の前へ来て、しばらく白木の棒を見ていたが、やがて手に持った、おもちゃの杓子(しゃくし)をおろして、猫に供えた茶碗の水をしゃくって飲んだ。それも一度ではない。萩の花の落ちこぼれた水の(したた)りは、静かな夕暮の中に、幾度(いくたび)愛子(あいこ)の小さい咽喉(のど)(うる)おした。
 猫の命日には、妻がきっと一切(ひとき)れの(さけ)と、鰹節(かつぶし)をかけた一杯の飯を墓の前に供える。今でも忘れた事がない。ただこの頃では、庭まで持って出ずに、たいていは茶の間の箪笥(たんす)の上へ載せておくようである。

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