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永日小品(えいじつしょうひん)--暖かい夢

时间: 2020-11-30    进入日语论坛
核心提示: 風が高い建物に当って、思うごとく真直(まっすぐ)に抜けられないので、急に稲妻(いなずま)に折れて、頭の上から、斜(はす)に舗
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 風が高い建物に当って、思うごとく真直(まっすぐ)に抜けられないので、急に稲妻(いなずま)に折れて、頭の上から、(はす)舗石(しきいし)まで吹きおろして来る。自分は歩きながら(かぶ)っていた山高帽(やまたかぼう)を右の手で(おさ)えた。前に客待の御者(ぎょしゃ)が一人いる。御者台(ぎょしゃだい)から、この有様を眺めていたと見えて、自分が帽子から手を離して、姿勢を正すや否や、人指指(ひとさしゆび)(たて)に立てた。乗らないかと云う符徴(ふちょう)である。自分は乗らなかった。すると御者は右の手に拳骨(げんこつ)を固めて、(はげ)しく胸の(あたり)を打ち出した。二三間離れて聞いていても、とんとん音がする。倫敦(ロンドン)の御者はこうして、(おの)れとわが手を暖めるのである。自分はふり返ってちょっとこの御者を見た。()(かか)った堅い帽子の下から、(しも)(おか)された厚い髪の毛が()()している。毛布(ケット)()ぎ合せたような(あら)い茶の外套(がいとう)の背中の右にその(ひじ)を張って、肩と平行になるまで(いか)らしつつ、とんとん胸を(たた)いている。まるで一種の器械の活動するようである。自分は再び歩き出した。
 道を行くものは皆追い越して行く。女でさえ(おく)れてはいない。腰の後部(うしろ)でスカートを軽く(つま)んで、(かかと)の高い靴が(まが)るかと思うくらい(はげ)しく舗石を鳴らして急いで行く。よく見ると、どの顔もどの顔もせっぱつまっている。男は正面を見たなり、女は傍目(わきめ)も触らず、ひたすらにわが(こころざ)(かた)へと一直線に走るだけである。その時の口は堅く結んでいる。(まゆ)は深く(とざ)している。鼻は(けわ)しく(そび)えていて、顔は奥行ばかり延びている。そうして、足は一文字に用のある方へ運んで行く。あたかも往来(おうらい)は歩くに()えん、戸外はいるに(しの)びん、一刻も早く屋根の下へ身を隠さなければ、生涯(しょうがい)の恥辱である、かのごとき態度である。
 自分はのそのそ歩きながら、何となくこの都にいづらい感じがした。上を見ると、大きな空は、いつの世からか、仕切られて、切岸(きりぎし)のごとく(そび)える左右の(むね)に余された細い帯だけが東から西へかけて長く渡っている。その帯の色は朝から鼠色(ねずみいろ)であるが、しだいしだいに鳶色(とびいろ)に変じて来た。建物は(もと)より灰色である。それが暖かい日の光に()()てたように、遠慮なく両側を(ふさ)いでいる。広い土地を狭苦しい谷底の日影にして、高い太陽が届く事のできないように、二階の上に三階を重ねて、三階の上に四階を積んでしまった。小さい人はその底の一部分を、黒くなって、寒そうに往来(おうらい)する。自分はその黒く動くもののうちで、もっとも緩漫(かんまん)なる一分子である。谷へ(はさ)まって、出端(では)を失った風が、この底を(すく)うようにして通り抜ける。黒いものは網の目を()れた雑魚(ざこ)のごとく四方にぱっと散って行く。(のろ)い自分もついにこの風に吹き散らされて、家のなかへ逃げ込んだ。
 長い廻廊をぐるぐる廻って、二つ三つ階子段(はしごだん)(のぼ)ると、弾力(ばね)じかけの大きな戸がある。身躯(からだ)の重みをちょっと寄せかけるや否や、音もなく、自然(じねん)と身は大きなガレリーの中に(すべ)り込んだ。眼の下は(まばゆ)いほど明かである。(うしろ)をふり返ると、戸はいつの間にか(しま)って、いる所は春のように暖かい。自分はしばらくの間、(ひとみ)()らすために、眼をぱちぱちさせた。そうして、左右を見た。左右には人がたくさんいる。けれども、みんな静かに落ちついている。そうして顔の筋肉が残らず(ゆる)んで見える。たくさんの人がこう肩を並べているのに、いくらたくさんいても、いっこう苦にならない。ことごとく互いと互いを(やわら)げている。自分は上を見た。上は大穹窿(おおまるがた)天井(てんじょう)極彩色(ごくさいしき)の濃く眼に(こた)える中に、(あざや)かな金箔(きんぱく)が、胸を(おど)らすほどに、(さん)として輝いた。自分は前を見た。前は手欄(てすり)で尽きている。手欄の外には()にもない。大きな穴である。自分は手欄の(そば)まで近寄って、短い首を(のば)して穴の中を(のぞ)いた。すると(はるか)の下は、絵にかいたような小さな人で(うま)っていた。その数の多い割に(あざやか)に見えた事。人の海とはこの事である。白、黒、黄、青、紫、赤、あらゆる明かな色が、大海原(おおうなばら)に起る波紋(はもん)のごとく、簇然(そうぜん)として、遠くの底に、五色の(うろこ)(なら)べたほど、小さくかつ奇麗(きれい)に、(うごめ)いていた。
 その時この蠢くものが、ぱっと消えて、大きな天井から、遥かの谷底まで一度に暗くなった。今まで何千となくいならんでいたものは(やみ)の中に葬られたぎり、誰あって声を立てるものがない。あたかもこの大きな闇に、一人残らずその存在を打ち消されて、影も形もなくなったかのごとくに(しん)としている。と、思うと、遥かの底の、正面の一部分が四角に切り抜かれて、闇の中から浮き出したように、ぼうっといつの()にやら薄明るくなって来た。始めは、ただ闇の段取(だんどり)が違うだけの事と思っていると、それがしだいしだいに暗がりを離れてくる。たしかに(やわら)かな光を受けておるなと意識できるぐらいになった時、自分は(きり)のような光線の奥に、不透明な色を見出(みいだ)す事ができた。その色は黄と(むらさき)(あい)であった。やがて、そのうちの黄と紫が動き出した。自分は両眼の視神経を疲れるまで緊張して、この動くものを(またた)きもせず凝視(みつめ)ていた。(もや)は眼の底からたちまち晴れ渡った。遠くの向うに、明かな日光の暖かに照り(かがや)く海を(ひか)えて、()上衣(うわぎ)を着た美しい男と、紫の(そで)を長く()いた美しい女が、青草の上に、判然(はっきり)あらわれて来た。女が橄欖(かんらん)()の下に()えてある大理石の長椅子に腰をかけた時に、男は椅子の横手に立って、上から女を見下(みおろ)した。その時南から吹く温かい風に誘われて、閑和(のどか)(がく)()が、細く長く、遠くの波の上を渡って来た。
 穴の上も、穴の下も、一度にざわつき出した。彼らは闇の中に消えたのではなかった。闇の中で暖かな希臘(ギリシャ)を夢みていたのである。

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