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永日小品(えいじつしょうひん)--人間

时间: 2020-11-30    进入日语论坛
核心提示: 御作おさくさんは起きるが早いか、まだ髪結かみゆいは来ないか、髪結は来ないかと騒いでいる。髪結は昨夕ゆうべたしかに頼んで
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  御作おさくさんは起きるが早いか、まだ髪結かみゆいは来ないか、髪結は来ないかと騒いでいる。髪結は昨夕ゆうべたしかに頼んでおいた。ほかさまでございませんから、都合をして、是非九時までにはあがりますとの返事を聞いて、ようやく安心して寝たくらいである。柱時計を見ると、もう九時には五分しかない。どうしたんだろうと、いかにもれったそうなので、見兼ねた下女は、ちょっと見て参りましょうと出て行った。御作さんはおよごしになって、障子しょうじの前に取り出した鏡台を、立ちながらのぞき込んで見た。そうして、わざとくちびるを開けて、上下うえしたとも奇麗きれいそろった白い歯を残らずあらわした。すると時計が柱の上でボンボンと九時を打ち出した。御作さんは、すぐ立ち上って、あいふすまを開けて、どうしたんですよ、あなたもう九時過ぎですよ。起きて下さらなくっちゃ、おそくなるじゃありませんかと云った。御作さんの旦那だんなは九時を聞いて、今床の上に起き直ったところである。御作さんの顔を見るや否や、あいよと云いながら、気軽に立ち上がった。

 御作さんは、すぐ台所の方へ取って返して、楊枝(ようじ)歯磨(はみがき)石鹸(しゃぼん)手拭(てぬぐい)()(まと)めにして、さあ、早く行っていらっしゃい、と旦那に渡した。帰りにちょっと(ひげ)()って来るよと、銘仙(めいせん)のどてらの下へ浴衣(ゆかた)を重ねた旦那は、沓脱(くつぬぎ)へ下りた。じゃ、ちょいと御待ちなさいと、御作さんはまた奥へ()け込んだ。その間に旦那は楊枝を使い出した。御作さんは用箪笥(ようだんす)抽出(ひきだし)から小さい熨斗袋(のしぶくろ)を出して、中へ銀貨を入れて、持って出た。旦那は口が()けないものだから、黙って、袋を受取って格子(こうし)(また)いだ。御作さんは旦那の肩の(うしろ)へ、手拭(てぬぐい)の余りがぶら下がっているのを、少しの間眺めていたが、やがて、また奥へ引込(ひっこ)んで、ちょっと鏡台の前へ坐って、再び我が姿を映して見た。それから箪笥の抽出を半分開けて、少し首を(かたむ)けた。やがて、中から何か二三点取り出して、それを畳の上へ置いて考えた。が、せっかく取り出したものを、一つだけ残して、あとは丁寧(ていねい)にしまってしまった。それからまた二番目の抽出を開けた。そうしてまた考えた。御作さんは、考えたり、出したり、またはしまったりするので約三十分ほど費やした。その間も始終(しじゅう)心配そうに柱時計を眺めていた。ようやく衣裳(いしょう)(そろ)えて、大きな欝金木綿(うこんもめん)の風呂敷にくるんで、座敷の(すみ)に押しやると、髪結が驚いたような大きな声を出して勝手口から這入(はい)って来た。どうも遅くなってすみません、と息を(はず)ませて言訳を云っている。御作さんは、本当に、御忙がしいところを御気の毒さまでしたねえと、長い煙管(きせる)を出して髪結に煙草(たばこ)()ました。
 梳手(すきて)が来ないので、髪を()うのにだいぶ(ひま)が取れた。旦那は湯に()って、(ひげ)()って、やがて帰って来た。その間に、御作さんは、髪結に今日は()いちゃんを誘って、旦那に有楽座へ連れて行って貰うんだと話した。髪結はおやおや私も御伴(おとも)をしたいもんだなどと、だいぶ冗談交(じょうだんまじ)りの御世辞を使った末、どうぞごゆっくりと帰って行った。
 旦那は欝金木綿(うこんもめん)の風呂敷を、ちょっと(はぐ)って見て、これを着て行くのかい、これよりか、この間の方がお前には似合うよと云った。でも、あれは、もう暮に、()いちゃんの所へ着て行ったんですものと御作さんが答えた。そうか、じゃこれが好いだろう。おれはあっちの綿入羽織(わたいればおり)を着て行こうか、少し寒いようだねと、旦那がまた云い出すと、およしなさいよ、見っともない、一つものばかり着てと、御作さんは(かすり)の綿入羽織を出さなかった。
 やがて、御化粧が出来上って、流行の鶉縮緬(うずらちりめん)道行(みちゆき)を着て、毛皮の襟巻(えりまき)をして、御作さんは旦那といっしょに表へ出た。歩きながら旦那にぶら下がるようにして話をする。四つ角まで出ると交番の所に人が大勢立っていた。御作さんは旦那の廻套(まわし)羽根(はね)(つら)まえて、伸び上がりながら、群集(ぐんじゅ)の中を(のぞ)き込んだ。
 真中に印袢天(しるしばんてん)を着た男が、立つとも坐るとも片づかずに、のらくらしている。今までも泥の中へ何度も倒れたと見えて、たださえ色の変った袢天(はんてん)がびたびたに()れて寒く光っている。巡査が御前は何だと云うと、呂律(ろれつ)の回らない舌で、お、おれは人間だと威張っている。そのたんびに、みんなが、どっと笑う。御作さんも旦那の顔を見て笑った。すると酔っ払いは承知しない。(こわ)い眼をして、あたりを見廻しながら、な、なにがおかしい。おれが人間なのが、どこがおかしい。こう()えたって、と云って、だらりと首を垂れてしまうかと思うと、突然(いきなり)思い出したように、人間だいと大きな声を出す。
 ところへまた印袢天を着た背の高い黒い顔をした男が荷車を引いてどこからか、やって来た。人を押し分けて巡査に何か小さな声で云っていたが、やがて、酔っ払いの方を向いて、さあ、野郎連れて行ってやるから、この上へ乗れと云った。酔払いは(うれ)しそうな顔をして、ありがてえと云いながら荷車の上に、どさりと仰向(あおむ)けに寝た。()かるい空を見て、しょぼしょぼした眼を、二三度ぱちつかせたが、箆棒(べらぼう)め、こう()えたって人間でえと云った。うん人間だ、人間だからおとなしくしているんだよと、背の高い男は(わら)(なわ)で酔払いを荷車の上へしっかり(しば)りつけた。そうして(ほふ)られた豚のように、がらがらと大通りを引いて行った。御作さんはやっぱり廻套の羽根を捕まえたまま、注目飾(しめかざ)りの間を、向うへ押されて行く荷車の影を見送った。そうして、これから美いちゃんの所へ行って、美いちゃんに話す種が一つ()えたのを喜んだ。

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