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永日小品(えいじつしょうひん)--山鳥

时间: 2020-11-30    进入日语论坛
核心提示: 五六人寄って、火鉢ひばちを囲みながら話をしていると、突然一人の青年が来た。名も聞かず、会った事もない、全く未知の男であ
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  五六人寄って、火鉢ひばちを囲みながら話をしていると、突然一人の青年が来た。名も聞かず、会った事もない、全く未知の男である。紹介状もたずさえずに、取次を通じて、面会を求めるので、座敷へしょうじたら、青年は大勢いる所へ、一羽の山鳥やまどりげて這入はいって来た。初対面の挨拶あいさつが済むと、その山鳥を座の真中に出して、国から届きましたからといって、それを当座の贈物にした。

 その日は寒い日であった。すぐ、みんなで山鳥の(あつもの)(こしら)えて食った。山鳥を(りょう)る時、青年は(はかま)ながら、台所へ立って、自分で毛を引いて、肉を()いて、骨をことことと(たた)いてくれた。青年は小作(こづく)りの面長(おもなが)(たち)で、蒼白(あおじろ)い額の下に、度の高そうな眼鏡を光らしていた。もっとも著るしく見えたのは、彼の近眼よりも、彼の薄黒い口髭(くちひげ)よりも、彼の穿()いていた袴であった。それは小倉織(こくらおり)で、普通の学生には見出(みいだ)()べからざるほどに、太い縞柄(しまがら)派出(はで)な物であった。彼はこの袴の上に両手を載せて、自分は南部(なんぶ)のものだと云った。
 青年は一週間ほど()ってまた来た。今度は自分の作った原稿を(たずさ)えていた。あまり()くできていなかったから、遠慮なくその(むね)を話すと、書き直して見ましょうと云って持って帰った。帰ってから一週間の(のち)、また原稿を(ふところ)にして来た。かようにして()れは来るたびごとに、書いたものを何か置いて行かない事はなかった。中には三冊続きの大作さえあった。しかしそれはもっとも不出来なものであった。自分は彼れの手に成ったもののうちで、もっとも(すぐ)れたと思われるのを、一二度雑誌へ周旋した事がある。けれども、それは、ただ編輯者(へんしゅうしゃ)御情(おなさけ)で誌上にあらわれただけで、一銭の稿料にもならなかったらしい。自分が彼の生活難を耳にしたのはこの時である。彼はこれから(ぶん)を売って口を(のり)するつもりだと云っていた。
 或時妙なものを持って来てくれた。菊の花を()して、薄い海苔(のり)のように一枚一枚に堅めたものである。精進(しょうじん)畳鰯(たたみいわし)だと云って、居合せた甲子(こうし)が、さっそく(ひた)しものに湯がいて、(はし)(くだ)しながら、酒を飲んだ。それから、鈴蘭(すずらん)の造花を一枝持って来てくれた事もある。妹が(こしら)えたんだと云って、指の(また)で、枝の(しん)になっている針金をぐるぐる廻転さしていた。妹といっしょに家を持っている事はこの時始めて知った。兄妹(きょうだい)して薪屋(まきや)の二階を一間借りて、妹は毎日刺繍(ぬいとり)稽古(けいこ)(かよ)っているのだそうである。その次来た時には御納戸(おなんど)の結び目に、白い(ちょう)刺繍(ぬいと)った襟飾(えりかざ)りを、新聞紙にくるんだまま、もし御掛けなさるなら上げましょうと云って置いて行った。それを安野(やすの)が私に下さいと云って取って帰った。
 そのほか彼は時々来た。来るたびに自分の国の景色(けいしょく)やら、習慣やら、伝説やら、古めかしい祭礼の模様やら、いろいろの事を話した。彼の父は漢学者であると云う事も話した。篆刻(てんこく)(うま)いという事も話した。御祖母(おばあ)さんは去る大名の御屋敷に奉公していた。(さる)の年の生れだったそうだ。大変殿様の御気に入りで、猿に(ちな)んだものを時々下さった。その中に崋山(かざん)()いた手長猿(てながざる)(ふく)がある。今度持って来て御覧に入れましょうと云った。青年はそれぎり来なくなった。
 すると春が過ぎて、夏になって、この青年の事もいつか忘れるようになった或日、――その日は日に遠い座敷の真中に、単衣(ひとえ)(ただ)一枚つけて、じっと書見(しょけん)をしていてさえ()えがたいほどに暑かった。――彼れは突然やって来た。
 相変らず例の派出(はで)(はかま)穿()いて、蒼白(あおしろ)い額ににじんだ汗をこくめいに手拭(てぬぐい)()いている。少し()せたようだ。はなはだ申し兼ねたが金を二十円貸して下さいという。実は友人が急病に(かか)ったから、さっそく病院へ入れたのだが、差し当り困るのは金で、いろいろ奔走もして見たが、ちょっとできない。やむをえず上がった。と説明した。
 自分は書見をやめて、青年の顔をじっと見た。彼は例のごとく両手を(ひざ)の上に正しく置いたまま、どうぞと低い声で云った。あなたの友人の(うち)はそれほど貧しいのかと聞き返したら、いやそうではない、ただ遠方で急の間に合わないから御願をする、二週間()てば、国から届くはずだからその時はすぐと御返しするという答である。自分は金の調達(ちょうだつ)を引き受けた。その時()れは風呂敷包の中から一幅の懸物(かけもの)を取り出して、これがせんだって御話をした崋山(かざん)(じく)ですと云って、紙表装の半切(はんせつ)ものを()べて見せた。(うま)いのか不味(まず)いのか判然(はっきり)とは解らなかった。印譜(いんぷ)をしらべて見ると、渡辺崋山にも横山華山にも似寄った落款(らっかん)がない。青年はこれを置いて行きますと云うから、それには及ばないと辞退したが、聞かずに預けて行った。翌日また金を取りに来た。それっきり音沙汰(おとさた)がない。約束の二週間が来ても影も形も見せなかった。自分は(だま)されたのかも知れないと思った。(さる)の軸は壁へ()けたまま秋になった。
 (あわせ)を着て気の()まる時分に、長塚(ながつか)が例のごとく金を()してくれと云って来た。自分はそうたびたび借すのが(いや)であった。ふと例の青年の事を思い出して、こう云う金があるが、もし、それを君が取りに行く気なら取りに行け、取れたら貸してやろうと云うと、長塚は頭を()いて、少し逡巡(しゅんじゅん)していたが、やがて思い切ったと見えて、行きましょうと答えた。それから、せんだっての金をこの者に渡してくれろという手紙を書いて、それに猿の懸物(かけもの)を添えて、長塚に持たせてやった。
 長塚はあくる日また車でやって来た。来るや否や(ふところ)から手紙を出したから、受け取って見ると昨日(きのう)自分の書いたものである。まだ封が切らずにある。行かなかったのかと聞くと、長塚は(ひたい)に八の字を寄せて、行ったんですけれども、とても駄目です、惨澹(さんたん)たるものです、(きた)ない所でしてね、妻君(さいくん)刺繍(ぬい)をしていましてね、本人が病気でしてね、――金の事なんぞ云い出せる訳のものじゃないんだから、けっして御心配には及びませんと安心させて、掛物(かけもの)だけ帰して来ましたと云う。自分はへええ、そうかと少し驚ろいた。
 (あく)()、青年から、どうも嘘言(うそ)()いてすまなかった、軸はたしかに受取ったと云う端書(はがき)が来た。自分はその端書を他の信書といっしょに重ねて、乱箱(みだればこ)の中に入れた。そうして、また青年の事を忘れるようになった。
 そのうち冬が来た。例のごとく(せわ)しい正月を迎えた。客の来ない隙間(すきま)を見て、仕事をしていると、下女が油紙に包んだ小包を持って来た。どさりと音のする丸い物である。差出人(さしだしにん)の名前は、忘れていた、いつぞやの青年である。油紙を解いて新聞紙を()ぐと、中から一羽の山鳥が出た。手紙がついている。その(のち)いろいろの事情があって、今国へ帰っている。御恩借(ごおんしゃく)金子(きんす)は三月頃上京の節是非御返しをするつもりだとある。手紙は山鳥の血で堅まって容易に(はが)れなかった。
 その日はまた木曜で、若い人の集まる晩であった。自分はまた五六人と共に、大きな食卓を囲んで、山鳥の(あつもの)を食った。そうして、派出(はで)小倉(こくら)(はかま)を着けた蒼白(あおしろ)い青年の成功を祈った。五六人の帰ったあとで、自分はこの青年に礼状を書いた。そのなかに先年の金子の件御介意(ごかいい)に及ばずと云う一句を添えた。

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