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永日小品(えいじつしょうひん)--懸物

时间: 2020-11-30    进入日语论坛
核心提示: 大刀老人(だいとうろうじん)は亡妻の三回忌までにはきっと一基の石碑(せきひ)を立ててやろうと決心した。けれども倅(せがれ)の
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 大刀老人(だいとうろうじん)は亡妻の三回忌までにはきっと一基の石碑(せきひ)を立ててやろうと決心した。けれども(せがれ)痩腕(やせうで)便(たより)に、ようやく今日(こんにち)を過すよりほかには、一銭の貯蓄もできかねて、また春になった。あれの命日も三月八日だがなと、訴えるような顔をして、倅に云うと、はあ、そうでしたっけと答えたぎりである。大刀老人は、とうとう先祖伝来の大切な一幅を売払って、金の工面(くめん)をしようときめた。倅に、どうだろうと相談すると、倅は(うら)めしいほど無雑作(むぞうさ)にそれがいいでしょうと賛成してくれた。倅は内務省の社寺局へ出て四十円の月給を貰っている。女房に二人の子供がある上に、大刀老人に孝養を尽くすのだから骨が折れる。老人がいなければ大切な懸物(かけもの)も、とうに融通の()くものに変形したはずである。
 この懸物(かけもの)は方一尺ほどの絹地で、時代のために煤竹(すすだけ)のような色をしている。暗い座敷へ懸けると、暗澹(あんたん)として何が()いてあるか分らない。老人はこれを王若水(おうじゃくすい)の画いた(あおい)だと称している。そうして、月に一二度ぐらいずつ袋戸棚(ふくろとだな)から出して、(きり)の箱の(ちり)を払って、中のものを丁寧(ていねい)に取り出して、(じか)に三尺の壁へ()けては、眺めている。なるほど眺めていると、(すす)けたうちに、古血のような大きな模様がある。緑青(ろくしょう)()げた(あと)かと怪しまれる所も(かす)かに残っている。老人はこの模糊(もこ)たる唐画(とうが)の古蹟に(むか)って、生き過ぎたと思うくらいに住み古した世の中を忘れてしまう。ある時は懸物(かけもの)をじっと見つめながら、煙草(たばこ)を吹かす。または御茶を飲む。でなければただ見つめている。御爺さん、これ、なあにと小供が来て指を()けようとすると、始めて月日に気がついたように、老人は、(さわ)ってはいけないよと云いながら、静かに立って、懸物を巻きにかかる。すると、小供が御爺さん鉄砲玉はと聞く。うん鉄砲玉を買って来るから、悪戯(いたずら)をしてはいけないよと云いながら、そろそろと懸物を巻いて、桐の箱へ入れて、袋戸棚(ふくろとだな)へしまって、そうしてそこいらを散歩しに出る。帰りには町内の飴屋(あめや)へ寄って、薄荷入(はっかいり)の鉄砲玉を二袋買って来て、そら鉄砲玉と云って、小供にやる。(せがれ)が晩婚なので小供は六つと四つである。
 倅と相談をした翌日、老人は桐の箱を風呂敷(ふろしき)に包んで朝早くから出た。そうして四時頃になって、また桐の箱を持って帰って来た。小供が上り口まで出て、御爺さん鉄砲玉はと聞くと、老人は何にも云わずに、座敷へ来て、箱の中から懸物を出して、壁へ()けて、ぼんやり眺め出した。四五軒の道具屋を持って廻ったら、落款(らっかん)がないとか、()()げているとか云って、老人の予期したほどの尊敬を、懸物に払うものがなかったのだそうである。
 倅は道具屋は()しになさいと云った。老人も道具屋はいかんと云った。二週間ほどしてから、老人はまた桐の箱を(かか)えて出た。そうして倅の課長さんの友達の所へ、紹介を得て見せに行った。その時も鉄砲玉を買って来なかった。倅が帰るや否や、あんな眼の()かない男にどうして譲れるものか、あすこにあるものは、みんな贋物(にせもの)だ、とさも倅の不徳義のように云った。倅は苦笑していた。
 二月の初旬に偶然(うま)伝手(つて)ができて、老人はこの(ふく)を去る好事家(こうずか)に売った。老人は(ただち)谷中(やなか)へ行って、亡妻のために立派な石碑を(あつら)えた。そうしてその余りを郵便貯金にした。それから五日ほど立って、常のごとく散歩に出たが、いつもよりは二時間ほど(おく)れて帰って来た。その時両手に大きな鉄砲玉の袋を二つ抱えていた。売り払った懸物が気にかかるから、もう一遍(いっぺん)見せて貰いに行ったら、四畳半の茶座敷にひっそりと懸かっていて、その前には()(とお)るような臘梅(ろうばい)()けてあったのだそうだ。老人はそこで御茶の御馳走(ごちそう)になったのだという。おれが持っているよりも安心かも知れないと老人は倅に云った。倅はそうかも知れませんと答えた。小供は三日間鉄砲玉ばかり食っていた。

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