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永日小品(えいじつしょうひん)-- 儲口(もうけぐち)

时间: 2020-11-30    进入日语论坛
核心提示:「あっちは栗(くり)の出る所でしてね。まあ相場がざっと両(りょう)に四升ぐらいのもんでしょうかね。それをこっちへ持って来ると
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「あっちは(くり)の出る所でしてね。まあ相場がざっと(りょう)に四升ぐらいのもんでしょうかね。それをこっちへ持って来ると、(しょう)に一円五十銭もするんですよ。それでね、私がちょうど向うにいた時分でしたが、浜から千八百俵ばかり注文がありました。(うま)く行くと一升二円以上につくんですから、さっそくやりましたよ。千八百俵(こしら)えて、私が自分で栗といっしょに浜まで持って行くと、――なに相手は支那人で、本国へ送り出すんでさあ。すると、支那人が出て来て、(よろ)しいと云うから、もう済んだのかと思うと、蔵の前へ高さ一間(いっけん)もあろうと云う大きな(たる)を持ち出して、水をその中へどんどん()み込ませるんです。――いえ何のためだか私にもいっこう分らなかったんで。何しろ大きな樽ですからね、水を張るんだって容易なこっちゃありません。かれこれ半日かかっちまいました。それから何をするかと思って見ていると、例の栗をね、(ひょう)をほどいて、どんどん樽の中へ放り込むんですよ。――私も実に驚いたが、支那人てえ(やつ)は本当に食えないもんだと(あと)になって、ようやく気がついたんです。栗を水の中に()ち込むとね、たしかな奴は尋常に沈みますが、虫の食った奴だけはみんな浮いちまうんです。それを支那人の野郎(ざる)でしゃくってね、ペケだって、(ひょう)の目方から引いてしまうんだからたまりません。私は(そば)で見ていてはらはらしました。何しろ七分通り虫が()ってたんだから弱りました。大変な損でさあ。――虫の食ったんですか。いまいましいから、みんな打遣(うっちゃ)って来ました。支那人の事ですから、やっぱり知らん顔をして、俵にして、おおかた本国へ送ったでげしょう。
「それから薩摩芋(さつまいも)を買い込んだこともありまさあ。一俵四円で、二千俵の契約でね。ところが注文の来たのが月半(つきなかば)、十四日でして二十五日までにと云うんだから、どう骨を折ったって二千俵と云う数が寄りっこありませんや。とうてい駄目だからって、一応断りました。実を云うと残念でしたがな。すると商館の番頭がいうには、(いや)契約書には二十五日とあるけれども、けっしてその通りには厳行しないからと、再三(すす)めるもんだから、ついその気になりましてね。――いえ(いも)は支那へ行くんじゃありません。亜米利加(アメリカ)でした。やッぱり亜米利加にも薩摩芋を食う奴があると見えるんですよ。妙な事があるもんで、――で、さっそく買収にかかりました。埼玉から川越(かわごえ)の方をな。だが口でこそ二千俵ですが、いざ買い占めるとなるとなかなか大したもんですからな。でもようやくの事で、とうとう二十八日過ぎに約束通りの俵を持って、行きますと、――実に狡猾(こうかつ)(やつ)がいるもんで、約定書(やくじょうがき)のうちに、もしはなはだしい日限の違約があるときは、八千円の損害賠償を出すと云う項目があるんですよ。ところが彼はその条款(じょうかん)を応用しちまって、どうしても代金を渡さないんです。もっとも手付(てづけ)は四千円取っておきましたがね。そうこうしている内に、先方(むこう)では芋を船へ積み込んじまったから、どうする事もできない訳になりました。あんまり業腹(ごうはら)だから、千円の保証金を納めましてね、現物取押(げんぶつとりおさえ)を申請して、とうとう芋を取り押えてやりました。ところが上には上があるもんで、先方は八千円の保証金を納めて、構わず船を出しちまったんです。でいよいよ裁判になったにはなったんですが、何しろ約定書が入れてあるもんだから、しようがない。私は裁判官の前で泣きましたね。芋はただ取られる、裁判には負ける、こんな馬鹿な事はない、少しは、まあ私の身になって考えて見て下さいって。裁判官も腹のなかでは、だいぶ私の方に同情した様子でしたが、法律の力じゃ、どうする事もできないもんですからな。とうとう負けました」

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